みなさんこんにちは!宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(まさとも)です!今回は8月下旬から行われた、名古屋大学での『民間における宇宙利用』2週間基礎コースに参加してきました!
実際に池田が体験し、学んできた内容を元に今回の記事を掲載します。
まずは、今回の『民間における宇宙利用』について説明します。
今回の開催で4回目の開催の講習で、超小型衛星やそのデータの利用に関する基礎知識を有し、民間における人工衛星利用の潜在的ニーズを掘り起こすことができる人材の育成を目指すのが、この講習の目的です。実際に、日本の宇宙関連の人材は宇宙開発をリードしているアメリカに比べて圧倒的に少なく、出遅れているのは事実です。また、宇宙開発の拡大には民間の参入が必要不可欠ですが、人工衛星開発についても巨額な費用がかかり、人材育成にも障害となっています。そこで、コストの大幅な削減や、開発スケジュールの短縮が可能な超小型衛星の開発が進められています。
しかし、それでも民間での超小型衛星の利用や、人工衛星からのデータを有効に活用できる人材はまだまだ不足しているのが現状を打破するためにも、本コースが開催されています。
対象者は名古屋大学の学生以外にも『人工衛星やデータを用いた宇宙利用に興味のある』学生、社会人を対象にしていて、池田も社会人枠で参加させていただきました。
第3回までは名古屋大学内での講習でしたが、コロナ禍の状況なので、今回は初となるオンライン講習でした。池田としては名古屋まで通えないので、オンラインだからこそ今回の講習に参加する事ができました。
【期間】
基礎コースは8月20日〜9月2日まで。
上級コースは9月7日〜9月18日まで。
【プログラム】
★基礎コース
<講義 (全てオンライン)>
– 国際的宇宙開発の現状と未来
– 衛星データ利用の実例
– 人工衛星プロジェクトの進め方
– 超小型衛星開発国際動向および将来の展望
– 超小型衛星の基礎
<1演習・実習 (実習・見学は名古屋大学他 現地)>
– 衛星データ利用演習
– 超小型衛星利用提案演習
– かかみがはら航空宇宙博物館見学/衛星開発実験室見学
– 小型衛星キット実習/衛星通信実習
★上級コース
※基礎コースの受講後に履修することを推奨します。
<講義 (全てオンライン)>
- リモートセンシングデータ解析講義
-
宇宙ビジネスが拓く新たな市場
-
熱真空・振動試験講義
-
国際宇宙法の最前線
-
国際宇宙プロジェクト管理・システムズエンジニアリング
<演習・実習 (実習は名古屋大学)>
- リモートセンシングデータ解析演習
-
熱真空試験実習
-
振動試験実習
今回、池田が参加したのは基礎コースです。
大学の講義のように毎日時間割が決まっていて時間になったらオンラインで参加の流れになります。
<<1日目>>
初日はオリエンテーションと『国際的宇宙開発の現状と未来』の講習。
オリエンテーションには今回の講習の意図、今後の進め方、受講生の簡単な自己紹介で、意外に名古屋大学以外の学生の参加が多く、社会人としての一般の参加は池田を含めて数人でした。
学部も理工学部や工学部、文系の学生も参加していて本当に様々な方が参加している印象でした。
オリエンテーションが終わり15分の休憩を挟んで、いよいよ講義が始まります。
知識不足を心配していたので、理解できるのか少し不安でしたが、2時間の講義はあっという間に感じ、初心者でも分かりやすい入り口から日本と世界のロケット開発の歴史やロケットの仕組み、ISS(国際宇宙ステーション)の説明、人工衛星の説明、データ活用など内容は盛りだくさんなのですが、分かりやすい説明でした。
また、講義を担当してくれた田中先生は、ISSの設計から20数年間プロジェクトに携わられていて、その田中先生から説明を聞かせていただけるという貴重な経験もテンションが上がってしまいました!
※後日、田中先生には取材を申し込ませて頂き、快諾いただいたので、取材記事をお楽しみに!
講義の終わりに、Googleフォームでアンケートとレポートを提出して初日の終了。
初心者向けに開催されるセミナーと同じような分かりやすい内容でしたが、ボリューム的には圧倒的に多く感じました。
<<2日目>>
- 人工衛星プロジェクトの進め方
-
衛星データ利用の実例
-
衛星データ利用演習
2日の日程はまずは『人口衛星プロジェクトの進め方』の講義からスタートです。
プロジェクトの概念、進め方、アイデアの出し方など、そもそもの部分からの説明で、今日からスタートする演習でのグループワークの為の説明が約半分の印象で、内容的には自分自身に対する復習の意味合いが強かったです。
ただ、実際の人工衛星の目的や用途を交えた説明では、聞いたことがある人工衛星は多くありましたが、内容の部分は知らないことだらけだったので、十分満足できる講習でした。
一番知識として「薄かったな」と感じたのは、人工衛星の軌道でした。
静止軌道の他にも、同期軌道、回帰軌道、準回帰軌道、極軌道、太陽周期軌道、準天頂軌道など初めて聞く事ばかりで、人工衛星の目的によってどの軌道に乗せる必要があるのか明確になっています。
2コマ目は『衛星データ利用の実例』の講義です。
衛星データの成り立ちや、基本的に見ているものは複合データになっていること、どんなデータが提供されているのかを一例をあげて説明してもらいました。
他にもリモセンの説明、電磁波のスペクトによる観測できるものの違いなどボリューム満点でした。
この講義も、この後のグループワークに向けて、『降雨量』のデータであるJAXAのGSMaPを取り上げての説明があり、これまで池田は触れてこなかったデータだったので、この講習で初めてGSMaPを知りました。
①2020/6 20時の雨の分布(九州地方)
提供:JAXA
②2020/6 20時
提供:JAXA
①は先日の台風10号の雨の分布を表したデータです。
他にも雲の状態、12時間、24時間、72時間の降雨量もデータとして合成できます。
②はマップ上から切り出した地域の雨量のグラフです。
表示する期間を12時間から最長1ヶ月まで選択してグラフの表示が可能となっています。
次からは『衛星データ利用演習』でのグループワークです。
あらかじめチームに分けられているので、それぞれのチームに分かれてオンラインでミーティングを行います。
テーマは『世界の雨について』
主にGSMaPを用いて、どのように衛星データを活用するのかがポイントになります。
ヒントとしては、防災、農業、天気予報、ビジネスのカテゴリの説明がありました。
池田が参加したチームは全部で4人、他の3人は大学生でした。
簡単な自己紹介の後、リーダーやサブなどの役割を決めて、アイデア出しから始まります。
それぞれがかなり面白いアイデアを出して、この日は終了時間になり、各自宿題として分担して情報収拾することに。
この時に残っていたアイデアとしては
- 都市部での雨に濡れない(濡れにくい)マップ
- ドライバー向け道路の冠水予報マップ
- 野球の試合を雨の日に別の場所で行うシステム
土日での情報収集と打ち合わせで、発表は『雨天時の野球場の最適化』で決まりました。
ここからは大急ぎで、資料作成です。
Googleのスライドで、全員がそれぞれのスライドを分担して作成。
なんとか発表までには間に合いました。
池田のチームは、雨の日に野球の試合が延期になってしまうのを移動範囲2時間以内の球場に移す事で、試合ができるのではないか?という考察の元、GSMaPを使って過去のデータから推測して組み上げました。
ターゲットは東京の神宮球場を中心とした首都圏でしたが、1ヶ月のうち雨が降った日で、近隣の球場での降雨量を照らし合わせました。
調べた結果としては、試合球場を移す事で、最適な環境での試合を行うことは十分に可能なことが推測できました。
今後の課題としていくつも問題はありますが、講師の先生からもまずまずの評価を得られました。
これで前半の終了です。
後半は超小型衛星についてのカリキュラムが盛りだくさんで、演習としてのグループワークもかなりの時間行いました。
初めてのことが多く、また、他の人からのアイデアやそれぞれの観点を聞けていい刺激をもらえる前半戦でした。
後半の体験記事もお楽しみに!!