皆さん、こんにちは!
宇宙メディアの投稿数も日を追うごとに増え、どんどん中身が充実してまいりましたね。
宇宙に住むという夢もいよいよ現実味を帯びてきたように思います。
さて、今回は皆さんの大好きな『食』がテーマです!
食は、生命の源。さらに気になるのは、その食生活。
一体地球の暮らしとはどう違うのか。宇宙飛行士の方々はどんなものを食べているのか。
今回のテーマは大ボリュームのため、なんと前編・後編に分けてお送りしていきたいと思います!
それでは順を追って、見ていきましょう!
宇宙食の種類
宇宙食の歴史はまだ浅く、1960年代に始まったとされており、その数は優に300種類以上あるといわれています。
その中の一部をご紹介させていただくと、温度安定化食品(レトルト食品)、加水食品(スープ、ライス、スクランブルエッグ等のフリーズドライ食品)、半乾燥食品(乾燥フルーツ、乾燥牛肉)、自然形態食(ナッツやクッキー)、生鮮食品(リンゴ、オレンジ、バナナ、ニンジン、セロリ、ロールパン等の新鮮な果物や野菜など)が主な食品となります。
日本食ではカレーライス、とはいってもルーは飛散してしまうので、ルーを直接ご飯へつけて食事を行うスタイルが一般的です。その他にもフードウォーマーと言われる食品を加熱する器具で温めて常温に戻して喫食したり、お湯を入れて、赤飯を作ることも可能だそうです。
また、「こうのとり」がISS(国際宇宙ステーション)へ補給に来た際には、先ほどメニューの一部として挙げた野菜やフルーツ等の生鮮食品が食べられるため、搭乗する宇宙飛行士たちの密かな楽しみとなっているのが動画からも伝わってきますね。
汁気の多いレトルト食品などは、無重力空間では喫食が困難であるため、粘り気が多く調理されており、塩や胡椒なども液体状に加工され、飛散リスクを可能な限り少なくしているそうです。
ISS内では、冷凍冷蔵機能のある保存器具が存在しないため、1年半以上の賞味期限があるものでなければならないようです。
余談ですが、現在ではISS内でレタスの栽培なども実験的に行われているとのこと。
この先栽培できる品目が増え自給自足自体が可能になれば、さらに暮らし向きが快適になり、こうした宇宙での活動領域が格段に広がりますね。
宇宙食開発費用
宇宙食の開発に要するお金となると、高額な金額を予想されることかと思います。
それもそのはず、現在ではおよそ約4万円かかるといわれています。
ちなみに、少し前まではおよそ約3万円であったとのことですが、原材料となる食材の価格と、宇宙食開発にあたって必要な試験や分析の費用が上がったためと指摘されています。
1日あたり1万円の値上がりというのは流石に痛手であるということで、現在コストの削減に奔走しているようです。
宇宙へ生鮮食品を届けている主な都道府県
宇宙食以外にISSへ運ばれているものが前回ご紹介した「こうのとり」に積まれてやってくるこれらの生鮮食品ですが、こうしてISSの皆さんが喫食できるのは、多くの日本の農家の方々のご協力あってのものなんです!
以下はそのラインナップになります。
北海道…玉ねぎ
青森県…リンゴ(ふじ)
茨城県…リンゴ(秋映)
大阪府…温州みかん
岡山県…シャインマスカット、オーロラブラック(大粒の種無しブドウ)
愛媛県…河内晩柑、清見オレンジ、レモン、温州みかん
佐賀県…温州みかん
宮崎県…パプリカ
みかん等の柑橘類系統の果物といえば、やはり名産地である愛媛県が随一でしょうか。
出荷される品目が多い印象を受けますね。
ちなみに、生鮮食品は、どのようにしてISSへ運ばれていると思いますか?
みかんやリンゴは丸ごとそのまま「こうのとり」へ搭載されているのでしょうか?
それとも厳重な梱包をされているのでしょうか?
実は、鮮度を保つためレイトアクセスといった搭載方法で積み込まれているんです。
ちなみに、レイトアクセスとは、通常の搭載形態とは異なり、時間の制約が厳しくフレッシュな状態でISSに輸送する必要のある物資を積み込む際に打ち上げる形態のことを言います。
「こうのとり」に積む込む際には物資がどこにあるのか、そのレイアウトも決まっており、レイトアクセスは、ISSへ到着したら内部から一番最初に取り出せる場所に配置されています。
さらに、シャインマスカットとオーロラブラックは、なんと一粒一粒手作業で房から切り取り梱包作業をしているのだとか!
その後、除菌作業、乾燥、食品の特性に合わせて鮮度保持フィルムを使用し丁寧に梱包後、飛散防止のために、ジップロックで包むという工程を経たのち、「こうのとり」へ搭載されるわけなんですね。
以下の画像の通り、しっかり梱包されているので安心ですね。
(JAXA『宇宙航空研究開発機構』「ISSに輸送した日本の生鮮食品「HTV8号機でISSに運ばれた生鮮食品」より画像引用)
本来長持ちしない生鮮食品を、四週間という長い期間鮮度を保つことができるこちらのシステムですが、構築されたJAXAの皆さんの日々の研鑽と世界トップの科学技術には改めて舌を巻いてしまいます。
それに加えて、こうしてひとつひとつ愛情を込めて作ってくださる農家の皆さんの日頃の努力が功を奏した結果と言えるでしょう。
宇宙空間での食生活
皆さんは宇宙食と聞いてどんなものを思い浮かべるでしょうか?
宇宙での最初の食事は歯磨きのチューブのような形の容器でペースト状のものだったそうです。
それからの技術はすさまじく、フリーズドライやレトルトの食品になりました。
宇宙は微小重力環境なので、液体や粉末が飛び散らず、常温で少なくとも1年半の賞味期限があり、かつ食中毒にならないようHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の元に作られている食品であることが重要です。
HACCP(ハサップ)とは、食品を扱う事業者が食中毒菌汚染や異物混入などの危険の原因を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全行程の中で、気概要因の除去・低減させるために重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。
HACCPは宇宙飛行士の健康と安全のために開発されたものですが、現在は地上でも導入されています。
詳しい内容は厚生労働省ホームページに載っていますので興味のある方は是非参考文献のURLから見てくださいね。
HACCPに沿った衛生管理のもと作られたISSでの食は3種類に分類されます。
1つ目は「標準食」です。アメリカとロシアが半分ずつ用意しており、16日分を1セットとし、宇宙飛行士が好きなものを食べます。
2つ目は「嗜好食」です。各宇宙飛行士の希望で滞在一カ月につき60パック程度選択できるそうです。
3つ目は「ボーナス食」です。宇宙飛行士の希望に基づき、NASAの検査に合格した市販の食品を宇宙食用パッケージに入れたものです。
ローソンのからあげくんや大人の粉ミルクが宇宙食としてニュースになりましたが、これらの「宇宙日本食」はボーナス食という位置づけとなっています。日本だけではなく、フランスやカナダなどほかの国々でも自国の宇宙飛行士のために宇宙食が開発されています。
「宇宙日本食」は食品メーカーが提案する食品をJAXAが制定している宇宙日本食認証基準と照らし、基準を満たしている場合に認証されます。
『宇宙日本食』を開発している企業
現在JAXAに認証された宇宙日本食は45品目あり、24社・団体が製造しています。
主食系・おかず系・嗜好品系とわけて24社の中からピックアップします。
主食系では、日清食品ホールディングス株式会社の、「スペースチキンラーメン・スペース日清焼きそばU.F.O.・スペースキーマカレーメシ」が認証されています。
ハウス食品株式会社では、レトルトの「イベリコ豚路マッシュルームのカレー・チキンカレー・ビーフカレー・ポークカレー」が認証されています。
尾西食品株式会社では、「白米・赤飯・山菜おこわ・鮭おにぎり」が認証されています。
白米はアルファ米でお湯を注入して食べるそうです。宇宙でもカレーライスやカップ麺が食べられるのは驚きですね。
次におかず系です。
宝食品株式会社からは「ちりめん山椒」が認証されています。
こちらは瀬戸内産のちりめんじゃこと国産の実山椒を砂糖と醤油、調味料で炊き上げた佃煮のようです。
株式会社山本海苔店では「味付海苔」、株式会社ホテイフーズコーポレーションでは「たれ味・柚子こしょう味の焼き鳥」が認証されています。焼き鳥缶は、市販で販売されている焼き鳥の缶詰と同品位のようです。コンビニでも見かけますね。皆さんも一度は食べたことがあるのではないでしょうか?
福井県立若狭高等学校では「サバ醤油味付け缶詰」が認証されています。小浜市田烏で養殖された新鮮なマサバを用いて作られたこちらの食品は、先輩から後輩へ引き継がれながら12年かけて完成しました。
どの食品もご飯に合うものばかりで、ご飯の時間が楽しくなりますね。
最後に嗜好品系(お菓子類)を紹介します。
山崎製パン株式会社では「羊羹の小倉味・栗味」、亀田製菓株式会社では「柿の種」、ヤマザキビスケット株式会社では「ミントキャンディー・黒飴」が認証されています。
また、主食系であげたハウス食品株式会社は「ピーチゼリー」も認証されています。
その他にも、飲み物に粉末タイプのものや、調味料など様々なものが認証されています。
まとめ
私たちが想像するよりも現在の宇宙での食事は多彩であり、国際色豊かなのですね。
宇宙食の技術は、現代の地上の食事においてもなくてはならないものとなっています。
自然災害の多い日本において、宇宙食は災害時の非常食にもなります。
コンビニや通販でも販売されている宇宙食、非常食を入れ替える際に宇宙食を入れてみてはいかがでしょうか?
そして、来週も宇宙食にまつわる特集をしたいと思います!
ぜひご覧ください!
【参考文献】