みなさんこんにちは!
宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!
最近の宇宙ビジネスの主流と言ってもいいのが低軌道上の人工衛星でのビジネスです。
比較的地球から近い低軌道に小型の人工衛星を打ち上げて様々なデータを活用していくのがコストが削減されるのですが、低軌道といえどもそこは宇宙空間で、故障したからといってすぐに修理ができるわけではないですし、小型といえども人工衛星は開発費も打ち上げ費用も決して安いものではありません。(一般の感覚としては激高です!)
その人工衛星が打ち上げてすぐに地球上との通信ができなくなってしまったら、故障の原因も分からずに、何のデータも得られずにデブリ(宇宙ゴミ)になってしまいます。
そのリスクを低減するためのビーコン(端末)の紹介事業が今回のリリースです。
リリース
損害保険ジャパン株式会社(代表取締役社長:石川 耕治、以下「損保ジャパン」)、SOMPOリスクマネジメント株式会社(代表取締役社長:中嶋 陽二、以下「SOMPOリスク」)およびANT61 PTY LTD (CEO & Founder:MIKHAIL ASAVKIN、以下「ANT61社」)は、今後の宇宙産業の成長を担う小型衛星打ち上げおよび運用を安定的に推進するため、2024年7月から協業を検討してきました。
この度、SOMPOリスクとANT61 社は、2024年11月、衛星事業者向けの衛星通信喪失リスクに備えて衛星の状態をモニタリングできるビーコンの日本における紹介契約を締結しました。
SOMPOリスクが、ANT61社のビーコンを国内衛星事業者に紹介し、軌道上での衛星運用リスクの低減をサポー トします。
1.背景
小型衛星の打ち上げにおいて、衛星が宇宙空間に投入された初期段階で地上との通信を喪失する事例が頻繁に発生しています。ひとたび地上と衛星との通信が途絶えてしまうと、故障原因が特定できず、 後続機の開発において効果的な対策を施すための適切なフィードバックを得られないという課題を抱えています。
この課題に対する解決策のひとつとして、SOMPOとANT61社は、低軌道衛星専用の情報伝達デバイスとなるビーコンに着目し、実用化に向けた検討に取り組んできました※1 。
※1小型衛星の通信喪失リスクに備えるソリューションの提供に向けてSOMPOとANT61が協業検討開始 https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2024/20240712_2.pdf
2.ビーコン紹介契約の概要
SOMPOリスクは、低軌道衛星専用の情報伝達デバイスとなるANT61社のビーコンを、「宇宙ビジネ ス支援サービス※2 」のメニューのひとつとして、日本の衛星事業者に紹介します。
また、SOMPOリスクとANT61社は、衛星事業者がより円滑にビーコンを導入できるよう技術的支援などにも取り組みます。
衛星事業者は、ビーコンから得られた情報を通じて、故障発生前後の衛星の状態についてビーコンを搭載しない場合よりも正確に把握し、故障の生じた衛星を復旧させるための手立てをより適切に検討することや、打ち上げを控えている後続機に対してどのような改善を施すべきなのかについて検討することが可能になります※1 。
なお、本紹介契約と関連し、損保ジャパンおよびSOMPOリスクは、ANT61社のパートナーとしてANT61社に対し、日本市場参入に関する助言を行います。
※2「宇宙ビジネス支援サービス」の提供開始リスクマネジメントの観点から宇宙ビジネスの成功・成長を支援 https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2023/20231122_1.pdf
小型人工衛星開発時の技術的な相談に対応するとともに、お客さまのプロジェクトを成功に導くという視点からリスクを抽出し、そのリスクの解決に向けた取り組みを総合的に支援します。
<主なコンサルティングメニュー>
・設計・製造等の専門知識を必要とする技術面での相談
・衛星開発プロジェクト等におけるリスクの現状分析・課題の抽出
・リスク対策の提案と実行支援
<コンサルティングの特長>
・衛星開発を長年経験してきたエンジニアが、衛星開発事業者の実情をふまえた的確な助言を提示します。
・プロジェクトメンバーの一員として加わり、開発伴走型でプロジェクト支援を行います。
・損保ジャパンが提供する宇宙保険等を通じたリスクファイナンス面からの支援を行うことが可能です。
3.今後について
SOMPOは、SOMPOの知見とANT61社のビーコンに関する技術を組み合わせ、日本の衛星事業者が地上との通信喪失リスクに備えられるソリューションの提供を通じて、日本の宇宙産業の発展に貢献します。
衛星運用の信頼性向上やリスクマネジメント、保険によるリスクファイナンスなど、側面から安心・ 安全を提供できるよう取り組みます。
【ANT61社 概要】
会社名 ANT61 PTY LTD
本社所在地 Suite 145/4 Cornwallis St, Eveleigh NSW 2015 Australia
CEO & Founder MIKHAIL ASAVKIN
URL https://www.ant61.com/
ANT61社は、2021年に設立されたオーストラリアのシドニーに拠点を置く宇宙スタートアップ です。同社は、重要なインフラの展開、保守、寿命延長のためのサービスを提供し、宇宙における持続可能な開発を支援することを目指しています。
この目標を達成するために、これまで同社は大型衛星を軌道上で保守するためのロボット技術の開発に取り組んでおり、現在は小型衛星の故障回復を実現する製品であるビーコンの提供準備に取り組んでいます。
あとがき
小型衛星が普及する中で、通信喪失リスクは衛星事業者にとって深刻な課題です。この問題を放置すると、衛星の高コスト開発が無駄になるだけでなく、宇宙産業全体の信頼性も低下する可能性があります。
今回のビーコン技術は、通信が途絶えた際の状況を迅速に把握し、問題解決の糸口を提供します。特に日本の宇宙事業者にとって、SOMPOのリスク管理ノウハウとANT61の革新的な技術が融合することで、安心して宇宙ビジネスを進める環境が整うと考えられます。
さらに、SOMPOの取り組みは単なる保険提供に留まらず、リスクマネジメントや技術的な伴走支援を通じて、宇宙産業の発展を後押ししています。
日本の宇宙ビジネスが今後どのように進化するのか目が離せません。