みなさんこんにちは!宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!
お待たせしました!!
名古屋大学の「民間における宇宙利用」2週間コース受講体験記事の後半戦です!
前半戦の記事を読んでいない方はまずは読んでください!
名古屋大学の「民間における宇宙利用」 2週間基礎コース受講体験記事!(前半戦)
後半戦のキーワードは『超小型衛星』です。
前半戦でも人工衛星について学んでいましたが、後半戦は『超小型衛星』です。
まずは、そもそも人工衛星とは?というところから講習の開始です。
池田も人工衛星はセミナーや画像などで見たことはありますが、人工衛星が飛ぶ原理や、重力、遠心力の関係で釣り合う仕組みなど、知らない内容だけどおさえておくべき基礎を学べました。
印象に残っている講習の内容を一部抜粋すると、
地上でボールを投げると重力より地上に落ちてしまう。(速度レベル1)
速度を上げると地面に落ちるまでの距離が伸びる。(速度レベル3、4)
ある一定の速度を超えると地面に落ちる事なく地球を回るようになる。(速度レベル4、5)
普段、ボールを投げて地面に落ちずに地球を回って戻ってくる経験なんて誰もした事がないと思います。
重力があるので当たり前ではあるのですが、人工衛星は上の図では、4、5の速度レベルが該当しています。
身近なもので人工衛星の速度と比較すると、
・新幹線 83m/s
・飛行機 272m/s
・音 340m/s
・ライフル 1000m/s
・人工衛星 7500m/s
人工衛星が音速をはるかに超える速度で飛び続けているのが分かると思います。
東京—大阪間(410km)を約1分40秒で移動する速度です!
人工衛星が飛んでいる軌道にも種類があり、
・低軌道 高度2000km未満。国際宇宙ステーションや小型衛星がここにいます。
・中軌道 高度2000km〜3600kmmまで。代表的な衛星はGPS衛星です。
・静止軌道 3600km前後。通信衛星や気象衛星ひまわりなど。
これまでの人工衛星の主流は大型の構成の機でしたが、サイズに比例して開発時間とコストが増大していて、重さ約4t、開発期間5〜10年、コストは数百億円!!
提供:JAXA
それに比べてcubesatと呼ばれる超小型衛星は10cm立方で重さは1kg!開発期間2年、コストは約300万円!(人件費などは含まず)
CubeSat XI-IV
サイズ、重量、開発期間、コストどれをとっても宇宙利用をする上での敷居を下げるきっかけとなり、爆発的に研究が進められました。
ちなみに、世界最小のCubeSat XIは東大が世界に先駆けて成功させています!
この10cm立方の小さな箱の中には、機械がギッシリ詰まっています。
衛星システムは大きくミッション部(ペイロード)と(衛星)バス部に分けられ、ペイロードは衛星のミッション(通信、観測、測位、探査など)を達成するための機器群をさし、その衛星の目的そのものです。
バスはミッション機器に動作環境を提供し、ミッション達成の支援を行うもので、バスサブシステムとその構成機器があります。
バスシステムの代表的なものとしては、
・太陽電池パドル系
・電源系
・姿勢/軌道制御系
・推進系
・構体系
・熱制御系
・計装系
10cm立方の中に、これだけの機能を搭載しなければならず、ハード面の設計も何度も組み直しをするとか。
これから身近になる、小型衛星、超小型衛星にいて、今までに知らなかった中身の構造や、活用案、さらには理学、工学、力学などの分野での解説も聞けてこの後の超小型衛星の演習につながっていきます。
次は外部講師として、シー・エス・シー・ジャパン株式会社の金岡氏による講習です。
これまでに様々な宇宙プロジェクトに携わっていて、事業の立ち上げや調査、データ利用など行われている方で、講習内容もかなり細かく、ボリュームも今回の基礎コースの中で一番だったと思います。
実際に人工衛星の打ち上げを重量別に集計し、さらにCubeSatもサイズ別、開発機関別に集計していて、データとしても大変貴重なものでした!
世界の小型衛星の動向も、民間、大学、宇宙機関、軍事機関別で紹介して頂き、とにかく情報量が多く、それをデータに表しているので、内容的には難しい話もあるのですが、初心者の私でも楽しく学べる内容になっていて、講習のイメージよりはセミナーに近い感覚でした。
アメリカのアリゾナ大学で行われたカンファレンスでの注目セッションや、世界のCubeSatの動向、小型衛星を用いた世界の宇宙企業の動向、既存衛星ビジネスの説明など、外部からの参加の私は大満足の内容でした!
次はいよいよ最終ブロックの『超小型衛星利用提案演習』です。
前半戦では『衛星データ利用演習』を行いましたが、衛星データ利用演習は5時間半に対して、超小型衛星利用提案演習は約15時間!(途中休憩時間も含まれています)
約3倍の時間をかけてより詳細な超小型衛星の利用提案をA〜Fの6チーム、各6名程度でグループワークを行います。
池田はAチームに分けられ、大学生3名、大学院生1名、外部2名のチームでした。
まずは自己紹介から始めてjambordを使ってのアイデア出しを行いますが、ここでもかなりたくさんのアイデアが出ます。
・超小型衛星を使って月面にインターネット環境の構築
・超小型衛星を使って複数の小惑星探査
・人工衛星の観測衛星
・小型衛星のコンステで巨大な太陽光発電システムの形成
他にもたくさんのアイデアをグルーピングし、実現性や話題性、プロジェクト化する意義、ビジネス性などを考慮し、テーマは『小惑星探査』に決まりました!
グループワーク中は講師の先生とチューターがそれぞれのチームを巡回し、チャットや通話でのアドバイスや相談受付などしてくれます。
中間報告、最終発表と全体に対しての発信のタイミングが2回あるので、それに対しての他チームと比べての進捗なども共有してもらいました。
Aチームは大幅には遅れてはいませんが、どちらかというと遅れ気味で、毎回大学側が設定しているミーティング時間をオーバーし、各自宿題を持ち帰って翌日マージする流れが定着していました。
池田として苦戦したのが、今回の利用提案演習では、科学的な見解や根拠が必要で、さらには小型衛星に搭載する機器も考えなければいけないことでした。
幸い、チーム内に『はやぶさ』のミッションに参加していたメンバーや、工学部のメンバーがいたので議論の材料も集まるし、方向性も定まっていたので、それぞれ得意な分野が違ってもチームで動く際の楽しさを改めて実感できました。
最終的にはミーティングをしながら全員でスプレッドシートにスライドを作って、最終発表にはなんとか間に合いました。
チーム内にガンダム好きのメンバーがいてテーマに対してのサブタイトルと、チーム名を拝借しました!
世代的には先生からのツッコミを期待していたのですが、全く触れてもらえませんでした。(泣)
Aチームの提案の概要としては、「今後コロニーなどを建設していくにあたり、惑星からの資源調達が必須になると想定して、超小型衛星によりたくさんの小惑星の資源分布をマッピングし、どの小惑星にどの資源があるのかを明確なデータにしておこう」というものです。
アプローチ方法、搭載機器、費用面、ビジネス化の観点でまとめているので、アイデアとしてはとても面白い内容だったと自負しています。
他のチームの提案も個性的な内容で、それぞれが良く調べられていてい今までにないプロジェクトなのではないかと思いました。
全チームの発表に対しての質疑応答の時間があり、それ以外にもチャットでの質問もたくさん飛び交っていました。
最後のチームの発表が終わり、修了式です。
長いようであっという間だった2週間の基礎コース。
全科目の履修で修了証が発行されるのですが、私は名古屋大学での『小型衛星キット実習』には参加できなかったので、修了証はもらえなかったのですが、また冬に開催予定で、部分履修もできるとのことなので、改めて受講しようと思っています。
初のオンライン開催で運営されている名古屋大学側は大変そうでしたが、定員が集合講習よりも多く受け入れてもらえたことと、遠方からの参加が可能になったのが池田としてはラッキーでした。
講習内容もグループワークでの自分にない、観点やアイデアなど様々なことを吸収できた時間でした。
今後もセミナーや講習会など積極的に参加して、知識習得とともに、体験記事をどんどん掲載していきますので、お楽しみに!!!