Tellus(テルース)事業の一環として東京・大阪で実施
インターネットインフラサービスを提供するさくらインターネット株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:田中 邦裕)は、AI開発・データサイエンティスト人材採用・育成サービスを提供する株式会社SIGNATEと一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)の協力のもと、当社が経済産業省事業として実施している「政府衛星データのオープン&フリー化・データ利用促進事業」(以下、「本事業」)の一環として、衛星データ活用技術者養成講座「Tellus Satellite Boot Camp」を東京と大阪で開催しました。
本稿では、10月26日(土)、27日(日)の東京開催の様子を中心にお届けします。
まず10月26日の講座開始に際し、さくらインターネット 菅谷 智洋より、当社が本事業で開発・運用している衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」※1について説明しました。説明の中で、菅谷は「今まで民間利用が難しかった衛星データだが、Tellusを活用して衛星データと地上データを組み合わせていくことで、新規ビジネス創出や既存ビジネスにイノベーションが生まれる状況を目指し、Tellusの開発・運用を行っている。本講座の参加を機に、ぜひとも皆さまにはTellusをどんどん利用して、Tellusに対するご意見を頂きたい。それをもとに随時アップデートを行い、より魅力的なプラットフォームにしていきたい」と思いを語りました。
【衛星データはどんな原理で何を測っている?リモートセンシングとは】
RESTECの道下 亮 氏より、衛星データを利用する際の基礎知識として、分解能やTellus搭載のデータ把握をはじめ、リモートセンシングの基本的な概要、衛星リモートセンシングの観測方法の説明を以下のように行いました。
「リモートセンシングとは、Remote(遠隔)Sensing(探査)と書き、離れた場所から対象物を計測する技術。つまり非接触であるという点。そして、物質の電磁波(光、電波)に対する特性を利用し計測する点、この二つが特徴になっており、一つの畑のなかで土の状態がどれほど異なるか、同じ川の中でもどこが濁っているか、といった情報も観測できる。衛星リモートセンシングにおいては何をどう観測しているかというと、太陽から出た光の反射や、地面からの放射、電波の散乱といったものを画像の情報に変換している。人工衛星に搭載されているセンサーは光と電波、両方の特徴を兼ね備えた電磁波を使用しており波長別に分けることができる」
続いてRESTECの瀬口 大介 氏より、Tellusを用いての衛星データを画像として処理する手法、画像の切り抜きやカラー合成、複数バンド画像からの画像化や衛星データでよく使用するバンド演算の紹介などを行いました。そして参加者には、実践的なデータ活用を学んでいただきました。
【衛星データ×機械学習 機械学習の必要性や意義を紹介】
再びRESTEC 道下氏が登壇し、衛星データを使い機械学習を行うことの必要性や意義を講義。また、リモートセンシングデータを利用した機械学習の事例紹介を行いました。その中で、「最近はさまざまなAIを使ったコンペティションが増えてきている。このような流れが始まったのは、リモートセンシングの業界が変わってきた影響であると分析している。背景にあるのは、利用コストの削減とプラットフォーマーの登場。まず衛星データといえば大型衛星を使用しデータを取得することに膨大なコストがかかっていたが、衛星が小さくなったことにより衛星自体の価格や、宇宙に打ち上げるための価格が安くなった。そして、これまで多くの場所に分散され、それぞれのフォーマットや規格が異なる状態で存在していた衛星データが、フリーかつオープンなTellusをはじめとしたプラットフォーマーの登場によって、データの集まる場所が1カ所に集中した。この2点は非常に大きな影響力を持った要因である」と説明しました。
その後、RESTEC 瀬口氏より、どのような教師データを作成するべきか、単純な物体検出の場合や建物、雲域別などでセグメンテーションの事例紹介と、実際に教師データを作成する演習を実施しました。
衛星データは人間には見えない光を捉えることや、人間が到達困難なエリアも衛星で確認が可能であること。また、誰でも簡単に衛星画像を解析できる時代になったこと。加えて衛星の数が増大し、衛星画像がビックデータ化したため、衛星画像と機械学習の相性が抜群であることを学び、本講座の1日目は終了しました。
【衛星データと機械学習を組み合わせた事例紹介と演習 物体検出に挑戦】
2日目は、1日目に学習した事柄をふまえ技術を習得していただくために、実際に「手を動かす」演習をメインに実施。
冒頭のプログラムでは、SIGNATEの高田 朋貴 氏より、機械学習で物体検出を行うにあたり、実施するタスクやフローの確認、過去に提案されてきたアルゴリズムの紹介や、物体検出の評価方法を講義しました。
「物体検出の基本的な流れは、領域を検出する、検出したものと画像分離を行う、この2ステップが基本的な流れである。代表的なアルゴリズムは今の2ステップをそのままに行う“two-stage”と、端折って一度に行う“one-stage”の2種類があり、また、物体検出における評価尺度は推論の速度と認識の精度の2つを評価することが多い。精度と速度はトレードオフである」と説明しました。
【今までの講義を振り返りながら物体検出 船舶検出に挑戦】
SIGNATEの青井 紀之 氏より、Tellusの開発環境が対応しているデータ分析ツール「Jupyter Notebook」上での物体検出アルゴリズムの動かし方の講義を行いました。その後は本講座最後の実習としてSIGNATEのコンペティション機能を利用し、Jupyter Notebook 上で、以前に本事業の一環として実施した衛星データ分析コンテスト(テーマ:高分解能光学衛星データを用いた水域における船舶検出)に挑戦しました。
・参考
第2回衛星データ分析コンテスト「Tellus Satellite Challenge」を開催!
https://www.sakura.ad.jp/information/news/2019/01/18/1968199301/
【受講者による物体検出の結果発表!】
コンテスト終了後、参加者の中から上位の方が工夫した点や解析の考え方などを発表。本講座での学びをより深めていただきました。
東京開催にて1位になった方は「期待以上の構成で大変勉強になりました。技術的な面でいえば手厚い資料にていねいな説明をしてくれたので初心者レベルでも理解できました。衛星データプラットフォームの情報やビジネス活用についても、自分が想像していたよりもオープンになっていて、すでにこんなに大量のリッチなデータがあると気づかされました。さらに無料で利用可能ということで驚きました」とコメント。
ほかの参加者からは「衛星データが未知だったので、興味があり参加しました。今回得た知見をビジネスにも取り入れていきたい」「推論の時点で色んな工夫をしないと精度が上がらないんだと気づいた」「ビジネス的に夢がある内容だと感じた。分析環境含め無料で使えるので、自分で色々できるのがいい」「将来を見据えて、大きな画像データから世の中の情報を読み取れる手段として身に付けた方がいいと感じ参加した。画像系の機械学習の処理を触ったことがなかったので、教師データ作成から自分で実際に分析するところまで一気通貫で学べたのがよかった」などの声がありました。
参加された40名のほとんどが、衛星データについて深く関わったのは今回が初めてだったとのこと。2日間に渡る講義や演習を経て、衛星データビジネスへの大きな可能性を強く期待できる時間となりました。
【11月16日~17日には大阪で開催!】
東京に続き、11月16日(土)~17日(日)にかけて大阪のさくらインターネット本社でも開催しました。
「Tellus Satellite Boot Camp」は、東京・大阪合わせて定員数80名を大幅に上回る約400名ものご応募をいただき、大盛況のもと幕を閉じました。
【衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」について】
Tellusは、さくらインターネットが経済産業省の「政府衛星データのオープンアンドフリー化・データ利活用促進事業」を受託し、開発・運用に取り組んでいる衛星データプラットフォームです。衛星データや衛星データを扱うさまざまなツールの提供、アプリケーションなどの開発環境、衛星データ活用のためのトレーニングおよび衛星データコンテストなどの教育コンテンツ、そして衛星データを活用するためのドキュメントを提供するオウンドメディアといった機能を有します。また、Tellusには衛星データに加え、気象、人流などの地上データを順次搭載しています。
本プラットフォームの名称は、宇宙から得られる地上のデータにより豊かな未来を作り出したいという意を込め、大地の女神「Tellus(テルース)」から取っています。
・ウェブサイト
https://www.tellusxdp.com/
【参考情報】
・さくらインターネット、SIGNATEとリモート・センシング技術センターの協力のもと、衛星データ活用技術者養成講座とeラーニングを提供開始
〜衛星データの解析者を育成し、衛星データプラットフォーム「Tellus」の利用者創出へ〜
https://www.sakura.ad.jp/information/pressreleases/2019/09/30/1968201316/