みなさんこんにちは!宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!
先日配信された『THE 有人DAY!!!』は見ましたか?
池田は都合が合わなくてアーカイブ配信を見ましたが、かなり見どころ満載だったので、記事にしちゃおうと思っています。
2部構成で、第1部は『管制室へGO!』ということで、JAXAのつくば管制室の内部まで紹介されています。
第2部は、『大西宇宙飛行士、選抜試験を語る』
約13年ぶりに行われる宇宙飛行士の選抜試験がありますが、第1部にも参加されていた大西宇宙飛行士が実際に経験した内容を語っていただけています。
ボリューム満点なので、今回は第1部にフォーカスした内容です。
しっかりと時間がある方はアーカイブ配信をご覧ください!最後に動画を載せておきます!
要点や内容だけを知りたい方は今回の記事でどうぞ!
有人宇宙技術部門
宇宙ビジネスMEDIAでも先日の記事で触れていますが、ISS(国際宇宙ステーション)や「きぼう」といった有人による宇宙環境利用システムなどの開発、運用を行う部署で、今回は「きぼう」や「こうのとり」の管制官やFD(フライトディレクター)の方々からのお話や、実際に「こうのとり」のフライトのシミュレーション訓練の模様や、各チームの内容など実際に携わっている方々からのインタビューを聞けます!
動画の内容に合わせて管制官、管制室の内容をメインに説明をしていきます!
こうのとりについては宇宙ビジネスMEDIAでも取り上げているので、詳しく知りたい方は【ISSの命綱】11年間、ありがとう!『こうのとり』をご覧ください!
内山FDとあるこう〜管制室はどんなとこ??〜
こうのとりのFD(フライトディレクター)の内山氏が実際につくばのこうのとり管制室の説明をしてくれました!
初めて見るので結構テンションあがります!!
しかも、訓練の内容も見れます!
本番に望むにあたっての訓練なので、本番さながらの緊張感です!
今回は『こうのとりに2つ搭載されているISSとの相対位置を測定しているセンサーの1つが突然OFFになる』というトラブルがおきている想定で、データが作成されていて、管制室で全て対応していく訓練でしたが、どんなトラブルがおこるかは知らされていない状況で、本番同様に運用を行う訓練です。
(提供:JAXA)
管制官同士はヘッドセットを使ってコミュニケーションを取っています。
この音声回線はNASAのヒューストン管制室や、ISS(国際宇宙ステーション)のクルーとも繋がっています。
ちなみに、こうのとりの管制官になるには
●決められた回数の訓練を受けること
●こうのとりの機体や運用に関する筆記試験
●訓練で不具合がおきた際に適切に対処できるかの実技試験
これらをクリアする必要があります。
さらに、FD(フライトディレクター)になるためには、管制官をまとめる資質をチェックするために面接試験があります。
こうのとりでは6,000〜7,000のテレメトリ(遠隔地にある計測器などのデータ)を観測しているそうです!
管制官のポジション
動画を見ていると「フライト」や「コマンド」、「パワー」など担当のチームらしき単語が聞こえてきます。
ここからは管制官が担当している各ポジションの呼び名と役割を説明していきます。
(提供:JAXA)
ちなみに、これが座席表で、画像中央のFLIGHTがFD(フライトディレクター)です。
HTV-FLIGH<フライト>
管制官全体の取りまとめを行うポジション。
こうのとりの運用全般の最終決定を行う最重要ポジションです。
ISSがこうのとりをキャプチャ(回収)するためにこうのとりが近付く為の『Go、No Go』を各ポジションに確認してNASAと最終調整をおこないます。
RNDV<ランデブ>
こうのとりの飛行に関する情報をNASAと方針などを調整するポジション。
FLIGHT(FD)の左隣の席だけど右腕的な存在です!!
SYS-J<シスジェイ>
国内でのこうのとりの情報や命令を取りまとめて、全体の運用を取りまとめ時間内に完了させるポジション。
全部のシステムを確認して、各ポジションと調整しつつ時間内に完了させることが一番苦労するポイント。
後述するコマンドをうつ、CMDと共に『最後の砦』と呼ばれています!
GNC<ジーエヌシー>
こうのとりの飛行姿勢を常に監視するポジション。
誘導制御系のテレメトリをモニターしていて、こうのとり(HTV)の姿勢や速度、加速度など沢山のレテメトリをモニターしています。
TRAJ<トラジェ>
こうのとり(HTV)がどうやってISS(国際宇宙ステーション)に近づいていくか事前に決定するポジションで、打ち上げ前の計画策定が一番大変なポイントです。
飛行中は軌道マヌーバ(宇宙船の軌道を変えるシステム)の状況を監視しています。
COMM/DH<コムディーエイチ>
こうのとりの通信系機器、様々なデータを処理するデータ処理装置を監視するポジションです。
こうのとりをコントロールするためには欠かせないシステムです。
CMD<コマンド>
直接こうのとりに命令を送ることができる唯一のポジション。
判断指示を行う、SYS-Jと共に「最後の砦」と呼ばれています。
GC<ジーシー>
こうのとりの運用に必要な地上設備をPCから通信設備など幅広く管理するポジション。
こうのとりに対してデータの送受信を行うモニターや異常が起こった際の対処を行っています。
HTV-SYS<シス>
FD、RNDVと同様にNASAと調整するポジション。
通信、熱、電力などシステム全般のバランスを考えながら全体の手順をNASAと調整し、システムの監視をしいています。
POWER<パワー>
こうのとりの心臓部の一つで、バッテリーなどの電源、電力系を専門にHTV-SYSよりも深く監視しているポジションです。
衛生や宇宙船は『POWER is Everything』と言われるくら重要なポジションです。
THERMAL<サーマル>
こうのとりの温度管理や、与圧モジュールなどの装置の管理をしているポジション。
POWER、HTV-SYSと協力してこうのとりのシステムを運用しています。
WLD<ワイルド>
こうのとり9号機で初となるポジションで、無線LAN通信実証実験を担当するポジション。
テレメトリのモニターを担当していました。
ここまでがフロントルームで動画の中で説明があったポジションです。
その他にバックルームと呼ばれる管制室とは別の部屋にもう1つチームがあります。
EST・技術支援班<エスト>
こうのとりの設計・開発に携わったエンジニアで構成されるチームです。
こうのとりにトラブルがあった際にはフロントルームで一次処置を行ってもらい、バックルームで二次処置、原因究明をエンジニアたちが迅速に対応しています。
きぼうの運用管制室
(提供:JAXA)
普段は見ることができない、きぼう(JEM)の運用管制室をFD訓練中の森氏、渡辺氏のお二人が紹介してくれました。
この運用管制室には24時間・365日管制官が常駐して、きぼうのシステム運用や実験運用が行われています。
きぼうの運用管制官は全体で約130名で、その内約80名がシステム運用を行っており、残りの約50名が実験運用を行っています。
きぼうの運用管制も複数のチームで協力して行っています。
(提供:JAXA)
ExPO(船外実験装置の担当)
きぼう日本実験棟船外プラットフォームに搭載された実験装置の監視や運用を担当するポジション。
微小重力や高真空といった宇宙環境下での船外実験や宇宙観測、材料実験を実施しています。
FLAT(熱・環境制御系の担当)
きぼうに搭載れている機体が、熱過ぎたり冷た過ぎたりならないようにするための管理をしたり、宇宙飛行士がISSの中で快適に生活できるように環境を整える仕事を担当しているポジションです。
万が一、火災がおきた際には積極的に対処にあたるポジションでもあります。
CANSEI(電力・通信系の担当)
きぼうに搭載されるコンピューターや通信・電力機器の運用管制を担当しています。
実験ラックの軌道や遮断、実験に使う通信量の制御なども行っていて、きぼうに搭載されているカメラの運用も担当しているポジションです。
Tsukuba GC(地上システムの担当)
つくば事業所の地上設備の運用管理を行っているセクションです。
この他にも実験運用を行っているチームがあったり、宇宙飛行士が起床後にはJ-COM(宇宙飛行士との交信担当)が来たり、宇宙飛行士の作業がある時にはARIES(宇宙飛行士の作業支援、物品管理)、ロボットアームの運用をするときはKIBOTT(ロボティクス担当)も参加して運用をサポートします。
あとがき
今回はライブ配信の内容で、池田が特に気になった『管制室・管制官』にフォーカスした内容にしました。
他にも、大西宇宙飛行士を交えた、視聴者からの質問に答えるようなコーナーもあり、普段聞けないような内容も盛りだくさんだったので、アーカイブ動画もぜひご覧ください!
地上での管制官の担当や仕事内容がわかると、今後の打ち上げ中継なども今までとは違って見えるでしょうし、苦労を乗り越えての成功の瞬間のガッツポーズなど胸を熱くするシーンも更に楽しめると思います♪
訓練中にもありましたが、本番でのFDが各ポジションに『Go、No Go』を確認しているシーンはカッコいいです!もちろん、訓練中もとてもカッコいいので興味があればぜひ見てください!