みなさんこんにちは!
宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!

今回はOKIの新サービスのリリースについて事前取材しておりますので、詳しくみなさんにお伝えできればと思っています。
テレビのニュースで取り上げるような、ロケットの打ち上げや、月面開発のような大々的なプロジェクトに注目が集まりがちですし、情報としても入ってきやすいんですよね。
でも、宇宙ビジネスMEDIAを始めて、多くの取材を行っていくと、本当に様々な宇宙産業でのチャレンジに触れる機会があります。

今回のOKIの新サービスもその一つです。
違う業種だとピンと来ないかもしれませんし、イメージしづらいこともあるかもしれませんが、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます!!

ぶっちゃけ、宇宙産業で活躍している企業って凄いんです✨

宇宙開発において、機器の信頼性は最も重要な要素の一つです。
地上では問題なく動作する機器でも、宇宙空間では想定外の不具合が発生することがあります。
その主な原因の一つが「熱」の問題です。

このたび、創業142年の歴史を持つ老舗電機メーカーのOKI(沖電気工業株式会社)が、宇宙機器向けの新サービス「SimuValid™(シミュバリ)」の提供を開始すると発表しました。
この革新的なサービスは、宇宙機器の開発における重要な課題を解決する可能性を秘めています。

今回は、OKIの技術力とこの新サービスがもたらす可能性について、詳しく解説していきます。
まずはリリースからどうぞ!

OKI、ロケットや衛星搭載機器向けに熱解析シミュレーション、実機検証、不具合解析を一括受託する「宇宙機器熱特性検証サービスSimuValid™」の提供を開始~放熱設計の精度向上、開発期間短縮、故障の未然防止に貢献~

OKIは、ロケットや人工衛星に搭載する機器を対象とした「宇宙機器熱特性検証サービスSimuValid™(注1)」を2025年1月29日より開始します。
成長著しいニュースペース市場をターゲットに、宇宙空間における熱解析シミュレーションおよび実機による熱特性検証(バリデーション)、さらに検証時に検出した不具合現象の部品レベル解析の3つを一括受託することにより、放熱設計の精度向上、開発期間の短縮、故障の未然防止に貢献し、2026年度に1億円の売上を目指します。

宇宙機器は、温度や気圧が急激に変化する過酷な環境下で稼働し続けることが求められます。
使用される材料の膨張係数はそれぞれ異なるため、地上とは異なる特殊で高度な放熱設計が必要です。
設計にあたっては、シミュレーション結果、実機によるバリデーション結果、不具合発生時の解析結果の3つをすり合わせて学習し、最適条件を導き出して設計・プロセスを改善していきます。
これを実現するには、3つの分野に精通した技術力、データと経験の蓄積による高い知見、そして高度な分析機器を扱う熟練した技術者の緊密な連携が不可欠です。

OKIは、地上から宇宙の真空環境への移行時に急激に変化する環境下での温度分布の変化を正確に把握する非定常熱解析(注2)による「宇宙機器向け熱解析シミュレーションサービス」を2024年11月より開始しました。
このサービスでは、シミュレーションのみならず、モジュールおよびユニットレベルで真空状態におけるバリデーションを行い、シミュレーション結果とバリデーション結果をすり合わせることで、モデルの精度向上を実現しています。
また、これまで宇宙機器に使用される電子部品に対する熱抵抗測定技術において、真空環境での測定サービスで多くの実績を挙げています。
新サービスでは、シミュレーションとバリデーションに加え、検出された不具合の部品レベルでの原因特定と迅速な解決策の提案までをワンストップで提供します。
これにより、部品・基板からモジュール、さらにはシステム全体にわたる設計信頼性を向上させ、過酷な宇宙環境下でも熱による故障を未然に防ぐ設計開発を支援します。

また、新サービスに向けて、OKIは機構設計、実装設計、エレキハードウェア設計の専門家と、半導体評価、特殊環境試験、最新のPCB放熱技術「凸型銅コイン埋め込みプリント配線板技術」の専門家の連携を強化し、トータルなサービスを提供する専門チームを結成しました。
このチームは、宇宙産業をはじめ、さまざまなお客様に提供してきたデザインサービス、試験サービスおよびPCBの実績とノウハウを活かし、正確なシミュレーションと実機測定試験、不具合解析に加えて、効率的な放熱ルートを確保した装置内機器レイアウト、PCBレイアウト設計、さらにPCB上の部品配置までを提案できます。
特に、さまざまな材料および形状の熱特性に関する知見が、効果的な放熱設計に貢献します。

OKIは、中期経営計画2025において、航空宇宙市場をEMS事業の注力分野としています。
設計・生産だけでなく、機器設計段階でのシミュレーションや機器・部品の宇宙環境試験など、宇宙品質のモノづくり力を活かし、グローバルな航空宇宙市場に向けた技術開発と販売拡大を進めています。

なお、新サービスと最新PCB放熱技術は、2025年1月29日にオンラインで開催する「宇宙開発を支える熱テクノロジー。先端の熱対策ソリューション!」セミナーで紹介します。

【販売計画】
標準価格:個別見積
販売目標:年間1億円(2026年度)
サービス提供開始時期:2025年1月29日

【リリース関連リンク】
・SimuValid™紹介サイト【OKIアイディエス】:https://www.oki-oids.jp/solution/products/SimuValid.html

・熱解析シミュレーションサービス 紹介サイト【OKIアイディエス】:https://www.oki-oids.jp/solution/products/simulation.html

・熱過渡特性解析(熱抵抗測定)紹介サイト【OKIエンジニアリング】:https://www.oeg.co.jp/analysis/thermalex.html

・PCB放熱技術紹介サイト【OKIサーキットテクノロジー】:https://www.oki-otc.jp/products/large_current.html

【用語解説】
注1:SimuValid™(シミュバリ)
シミュレーション(Simulation)と評価検証(Validation)を一気通貫で行うサービスの商標。

注2:非定常熱解析
非定常熱解析とは、時間の変化に伴う温度分布を解析する手法である。この手法により、機器や環境が温度変動に、どのように反応するかをシミュレーションし、設計や改善策の検討に役立つ。


ここからは事前取材をもとにOKIの紹介やSimuValid™のポイントを簡単にまとめてみました。
これからの未来に目を向けたサービスになると思うので、多くの人に知ってもらいたいです♪

142年の歴史を持つOKIの強み

まず、このサービスを提供するOKIについて紹介しましょう。
1881年(明治14年)に創業したOKIは、日本の電機産業の黎明期から成長を続けてきた企業です。
現在の売上高は4,219億円(2024年3月期)、従業員数は14,439名(グループ連結)を誇る大手電機メーカーです。

(提供:OKI)

特に注目すべきは、OKIが持つEMS(Electronics Manufacturing Service)の体制です。
装置の方式設計から、部材調達、製造、組立、検査、信頼性評価まで、一貫した製造サービスを提供できる体制を整えています。

この強みを活かし、OKIは中期経営計画2025において航空宇宙市場をEMS事業の注力分野として位置づけています。
今回発表されたSimuValid™は、その戦略の重要な一歩と言えるでしょう。

宇宙空間における「熱」の課題~なぜ宇宙では熱が問題になるのか?~

私たちが暮らす地上と宇宙空間では、熱の伝わり方が大きく異なります。
地上では空気を通じて熱が逃げていきますが、真空の宇宙空間ではそうはいきません。
さらに、以下のような特殊な環境要因が加わります。

・ 真空環境による熱伝導の変化
・ 極端な温度差(太陽光が当たる面と影の面)
・ 急激な温度変化(日陰に入る瞬間など)
・ 材料の熱膨張係数の違いによる歪み

これらの要因により、地上で問題なく動作する機器でも、宇宙空間では予期せぬ故障を起こす可能性があります。

SimuValid™サービスの詳細サービスの特徴と革新性

(提供:OKI)

SimuValid™の最大の特徴は、以下の3つのプロセスを一気通貫で提供することです

1. 熱解析シミュレーション
– 非定常熱解析による精密な温度予測
– 環境変化に対する機器の応答をシミュレーション
– 部品レベルから装置全体までの総合的な解析

2. 実機による検証(バリデーション)
– 真空環境での実機テスト
– モジュールおよびユニットレベルでの検証
– 熱電対による精密な温度測定

3. 不具合解析と改善提案
– 部品レベルでの原因特定
– 効果的な放熱ルートの提案
– PCBレイアウト設計の最適化

独自技術による課題解決

OKIは、このサービスを支える重要な独自技術として「凸型銅コイン埋め込みプリント配線板技術」を持っています。
この技術により、効果的な熱対策を実現することが可能です。

また、機構設計、実装設計、エレキハードウェア設計の専門家と、半導体評価、特殊環境試験の専門家による専門チームを結成。
総合的な視点から問題解決にあたります。

期待される効果と市場への影響 開発プロセスの革新

従来の宇宙機器開発では、以下のような課題がありました

– 長い開発期間
– 高いコスト
– 試行錯誤による非効率
– 専門知識の必要性

SimuValid™は、これらの課題に対して以下のような解決策を提供します

1. 開発期間の短縮
– シミュレーションによる事前検証
– 効率的な問題特定と解決

2. コスト削減
– 試作回数の削減
– 効率的な開発プロセス

3. 信頼性の向上
– 精密な熱解析
– 実環境での検証
– 専門家による総合的な評価

市場への影響
OKIは、このサービスにより2026年度に1億円、2031年度には10億円の売上を目指しています。
この目標からは、急成長が期待される宇宙ビジネス市場への本格参入の意気込みが感じられます。

特に注目すべきは、このサービスが「ニュースペース」と呼ばれる新しい宇宙ビジネス市場をターゲットとしている点です。従来の大手企業だけでなく、新興企業やスタートアップも視野に入れたサービス展開が期待されます。

具体的な活用シーン
SimuValid™は、以下のような場面での活用が期待されます

1. 地上製品の宇宙対応
– 既存製品の宇宙環境適応
– 設計変更の最適化

2. 新規宇宙機器開発
– 初期設計段階からの熱対策
– 信頼性の高い設計実現

3. 既存機器の改良
– 性能向上
– コスト効率の改善

今後の展望 セミナーの開催

OKIは、2025年1月29日にオンラインセミナー「宇宙開発を支える熱テクノロジー。先端の熱対策ソリューション!」を開催予定です。
このセミナーでは、SimuValid™の詳細や最新のPCB放熱技術について解説される予定です。

(提供:OKI)

宇宙産業への影響
SimuValid™のような革新的なサービスの登場は、日本の宇宙産業に大きな影響を与える可能性があります

1. 参入障壁の低下
– 専門知識がなくても宇宙機器開発が可能に
– 新規参入企業の増加

2. 開発の効率化
– 開発期間の短縮
– コスト削減による競争力向上

3. 技術革新の加速
– 新しい設計手法の確立
– 品質・信頼性の向上

おわりに

OKIのSimuValid™サービスは、宇宙開発の民主化に向けた重要な一歩と言えます。
142年の歴史で培った技術力と、最新のシミュレーション技術を組み合わせることで、宇宙機器開発の新しい可能性を切り開こうとしています。

特に、近年急成長している小型衛星市場において、このサービスが果たす役割は大きいと考えられます。
信頼性の高い機器開発を効率的に行えることで、より多くの企業が宇宙ビジネスに参入できるようになるでしょう。

日本の製造業の歴史を支えてきたOKIが、次は宇宙産業の発展を支える存在となることが期待されます。
SimuValid™を通じて、どのような革新的な宇宙機器が生まれていくのか、今後も注目していきたいと思います。

宇宙って遠いと感じている人も多いですが、普段から使うような身近なものだってどうやって作られているか知らない人がほとんどだと思います。(いけだもスマホ作ったことないし、作り方なんてわからないです。。)
人工衛星のような宇宙機器も将来的に身近になったとしても中身を理解する必要はないです。
ただし、活用する上で任せられる人がいてくれたらめっちゃ助かるはずなんです!
車を修理したい、家電を買い替えたいなどユーザーとしての観点と、ビジネスとして参入する上では観点が変わってきます。

情報を取得して、活用していくためにはまずは『知る』ところからだと思いますので、宇宙産業に興味のある方はOKIの新サービスもしっかり押さえた上で、いろんな角度から検討してみてはいかがでしょうか。