みなさんこんにちは。
宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!

今回はスペースデブリ(宇宙ゴミ)除去の分野で世界を牽引しているアストロスケール社が今年の2月に開始したミッションに世界で初めて成功したとリリースが届きました✨
スペースデブリはこれからの宇宙開発にとってはとても重要な問題です。
これまでに打ち上がっている人工衛星やロケットの残骸や部品などが宇宙空間に漂い続けています。
しかも、地上のゴミと違って高速で飛び回っている状態なので、宇宙機に対しては衝突されて故障するリスクとなりますす、サイズによっては今後の打ち上げの妨げにもなってしまいます。
だからこそ、運用が終了した人工衛星などはそれを放置しないようにルールが定められていますが、それ以前は放置したままになっているケースも。。。
それを解決するために突き進んでいるのがアストロスケール社ですね!

リリース

持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ごみ、以下、デブリ)除去を含む軌道上サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングス(本社:東京都墨田区、代表取締役社長兼CEO 岡田光信)の子会社で人工衛星システムの製造・開発・運用を担う株式会社アストロスケール(本社:東京都墨田区、代表取締役社長 加藤英毅、以下「アストロスケール」)はこの度、今年2月に開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan の略)」のミッションにおいて、観測対象のデブリの周回観測に成功したことをお知らせいたします。本物のデブリの周囲を飛行する運用に成功したのは世界初※1です。

運用を終了した衛星等のデブリは非協力物体※2と呼ばれ、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られません。そのため、その劣化状況や回転レートなど、軌道上での状態を把握しつつ当該デブリに安全・確実にRPO※3(ランデブ・近傍運用)を実施することは、デブリ除去を含む軌道上サービスを提供するために不可欠な技術です。ADRAS-Jは実際のデブリへの安全な接近を行い、近距離でデブリの状況を調査する世界初※4の試みです。具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行っています。

この度実施した周回観測では、一定の距離を保ちながら物体の周りを飛行するという、RPOの中でも非常に高度な技術を実証しました。6月に実施した一度目の周回観測では、デブリの周囲を1/3程度(約120度)周回したところでデブリとの相対姿勢制御の異常を検知し、自律的にアボート※5しました。これにより、ADRAS-Jが観測実施中、すなわち非協力物体の周囲を飛行しながらでも、安全を確保できることが実証されました。そしてこの度、アボートによりデブリから一旦待避していたADRAS-Jを再度観測対象のデブリに接近させた後、デブリの周囲を約50mの距離を維持しつつ姿勢を制御しながら360度周回飛行する運用を行い、太陽や地球※6からの照明条件がダイナミックに変化する中、デブリの極めて鮮明な連続撮影に成功しました。これは宇宙ミッションにおいて前例のない運用になりました。

周回観測にて撮影した観測対象のデブリ(7月15日)


周回観測にて撮影した観測対象のデブリ(7月16日)

周回観測にて撮影した観測対象のデブリのタイムラプス
7月15日、望遠にて撮影:https://www.youtube.com/shorts/bKKkkX-7fn8

7月15日、広角にて撮影:https://www.youtube.com/shorts/Wk2N9Ldh-SA

 

7月16日、望遠にて撮影:https://www.youtube.com/shorts/V_dW4PC139Q

 

7月16日、広角にて撮影:https://www.youtube.com/shorts/hXg_Jt4ni8I

通信衛星や地球観測衛星などのRPOを目的としない衛星は、自身の姿勢制御や軌道維持、デブリとの衝突回避、そして大気圏再突入や墓場軌道への軌道離脱以外は基本的には地球の周りを周回するのみで、特定の物体に接近したりその周囲で近傍作業を行うことはなく、そのような機能も有していません。しかし、軌道上サービスにおいては対象となるデブリや衛星などの特定の物体に接近し必要に応じて捕獲することが必要になり、対象物体への安全な接近や近傍作業といった難易度の高い運用が不可欠です。この度、非協力物体に対する周回観測の実証に成功したことで、軌道上サービスの提供に向けてさらにRPOの実績を積むことができました。

また、本ADRAS-Jミッションは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が大型デブリ除去等の技術実証を目指し実施する商業デブリ除去実証(CRD2※7)のフェーズIとして実施しています。アストロスケールはデブリの除去としてその捕獲や軌道離脱も行うフェーズIIにも契約相手方として選定されており、そのミッションで運用するADRAS-J2(Active Debris Removal by Astroscale-Japan2 の略)の開発を進めていますが、これまで実施した3回の周回観測で、ADRAS-J2のミッションで捕獲箇所として想定している衛星分離部(PAF※8)に大きな損傷が見られないことが明らかになりました。ADRAS-J運用の実績やこの他の得られたデータも、ADRAS-J2のミッションに向けて活かしてまいります。

これまでのADRAS-Jミッション運用実績
2月18日:Rocket LabのElectronロケットにより打上げ
2月22日:デブリへの接近を開始
4月9日:相対航法(AON※9)と近傍接近を開始
4月16日:相対航法(MMN※10)を開始
4月17日:デブリの後方数百mへの接近に成功
5月23日:デブリ後方約50mへ接近に成功
5月23日:定点観測(1回目)を実施・成功
6月17日:定点観測(2回目)を実施・成功
6月19日:周回観測(1回目)を実施。アボートにより衝突回避機能の有効性を実証
7月14日:デブリ後方約50mに到達、定点観測(3回目)を実施・成功
7月15日:周回観測(2回目)を実施・成功
7月16日:周回観測(3回目)を実施・成功

軌道上サービス、そして宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)の基礎を築く本ミッションの進捗は随時ご案内してまいります。今後の最新情報にご期待ください。

ADRAS-J紹介動画: https://www.youtube.com/watch?v=FGus-3T_ihE&t=1s
ADRAS-Jミッションページ:https://astroscale.com/ja/missions/adras-j/

※1 過去に同様のミッションが実施されたか否かを自社で調査(2024年7月)
※2 非協力物体:接近や捕獲・ドッキング等を実施されるための能力・機器を有さない物体のこと
※3 RPO:Rendezvous and Proximity Operations Technologiesの略称。ランデブ・近傍運用
※4 過去に同様のミッションが実施されたか否かを自社で調査(2024年6月)
※5 アボート:クライアントに対する衝突を回避するためマヌーバを実施し安全な距離まで待避すること
※6 太陽光の地球による反射
※7 CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstrationの略称
※8 PAF:Payload Attach Fittingの略称。ロケットと衛星をつなぐ台座
※9 AON:Angles-Only Navigationの略称。デブリの方角情報を用いる相対航法
※10 MMN:Model Matching Navigationの略称。デブリの形や姿勢の情報を用いる相対航法

商業デブリ除去実証について
アストロスケールは、大型デブリ除去等の技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商業デブリ除去実証フェーズIの契約相手方として選定、契約を受けて、ADRAS-Jを開発しました。商業デブリ除去実証は、深刻化するデブリ問題を改善するデブリ除去技術の獲得と、日本企業の商業的活躍の後押しの二つを目的とする JAXAの新しい取り組みです。この枠組みに基づき、本事業はJAXAから技術アドバイス・試験設備供用・研究成果知財提供を受けて実施されています。
商業デブリ除去実証ウェブサイト:https://www.kenkai.jaxa.jp/crd2/project/

あとがき

ADRAS-Jの世界初となるミッションの成功は凄いことですね!
観測対象となる大型デブリに近づいて周回観測&撮影が安全にできるなんて『どんな技術なんだ?!』って思っちゃいますよね。
秒速8kmくらいのスピードの世界ですよ?
ジャンボジェット機の約30倍で、ライフルの約8倍ですよ!
(どちらも実生活で感じずらい速さですけどね^^;)

何が言いたいかというと本当に凄い事を成し遂げたという事です!
今後もアストロスケール社からはたくさんのリリースが届くと思いますのでみなさんにも随時お届けしますね✨