みなさんこんにちは!
宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!
みなさんは『スカパー』と聞いて何を思い浮かべますか?
いけだはずっと衛星放送をイメージしていました!
ただ、宇宙ビジネスに携わるようになってからは色々と学んで『スカパー』のイメージも大きく変わってきました!
今回はそんなスカパーJSAT社の記者懇談会に初参加してきましたので、スカパー!のイメージが強い方向けにスカパーJSATの宇宙事業についてと、デモ体験してきたweb上で地表面変動をモニタリングできる『LiANA』のレポをお届けします✨
スカパーJSATの宇宙事業
今回は新領域事業本部のスペースインテリジェンス事業について説明していただきました。
スカパー!は静止軌道にある通信衛星、放送衛星を使用していますが、近年では低軌道衛星のビジネスが活発になっていて、スカパーJSATも低軌道衛星による地球観測に解析・分析などの付加価値をつけてサービスを提供しています。
スカパーJSATの昨年の宇宙事業の収益は647億円で、スペースインテリジェンス事業はその内の4%ですが、2030年までに20%〜30%に引き上げることを目標に掲げています!
(4%でも25億円の収益という物凄いことになっていますよね!)
地球観測衛星に搭載されている主なセンシング技術の中でもこの後紹介される『LiANA』でも使われているSAR(合成開口レーダ)は特に注目を集めいています。
衛星からのデータを光学でイメージされる方も多いかもしれませんし、最新のカメラでは30cmくらいの物も判別できるくらいの衛星写真を撮影することも可能です!
ただし、一般的なカメラと同様なので弱点も同じで、雲があれば地上が撮影できませんし、夜間も撮影できません。
そこで活躍するのがマイクロ波の反射を観測するSAR衛星です!
昼夜天候の影響を受けないので、地球観測に適しているケースも多くなってきています。
業務提携している小型SAR衛星のコンステレーション化を目指すQPS研究所と協力・連携することにより、人工衛星自体とデータを地上で受信するための地上局の拡張、世界で最も高域な地上局ネットワークを持つKSAT社との連携、得られたデータを独自アルゴリズムによる解析・分析により付加価値をつけたソリューションの提供、天地人コンパスという地球観測ソリューションを保有する天地人との資本提携によるサービス面での強化を行い衛星データ事業を加速させていくようです。
web上で地表面変動をモニタリングできる『LiANA』
衛星からのリモートセンシングで斜面やインフラの変動リスクをモニタリングするLiANAの紹介です。
リモートセンシングとしてまずは観測ですね。
人工衛星で地球を観測します。
次に、観測データを地上局で受信し、SAR衛星データを人間が利用できる形に加工していきます。
それを災害予測などに活用していきます。
分解能30cmクラスの光学画像なので、トラックの台数を数えることが可能なくらい鮮明な衛星写真ですね。
よく見ていただくと影があるので、日中に撮影されていることが伺えると思います。
(もちろん撮影地点の上空に雲がないことが大前提です。)
こちらは分解能50cmのSAR画像です。
車両の台数を確認できるくらいの解像度でさらには雨天や夜間でも撮影可能です。
大規模な山火事では煙が発生します。
台風やハリケーンでは当然ですが、雨雲に覆われているのでSAR衛星の出番になります!
SARの魅力・利点として代表的なものがこの4つです。
・全天候型観測
・高解像度画像
・地表面変動検出
・3D構造観測
もちろん課題もありますが、SARの特性に合わせた活用を行うことで我々の生活をより良くしてくれうことになります。
ここからいよいよLiANAの紹介です!
SAR衛星データを用いて、web上で地表面の変動をモニタリングできるシステムで、具体的には、地盤沈下の変化を可視化してくれるシステムです。
一般生活で個人ユーザーが利用するサービスではないので、イメージしづらい部分もあるかもしれませんが、関連する方々には画期的なシステムです!
山林を管理されている場合だと、地滑りや土砂崩れなど広い範囲で管理することは難しいです。
また、埋立地の地盤評価をして上で、インフラ工事をする場合、地下の工事をする場合に活用されるケースが多いようです。
LiANAの特徴として
・低コスト:1km×1kmを1メッシュとして年額21万円(税抜)から利用可能
・すぐに使える:web上から場所を指定すればすぐに利用可能
・必要な範囲だけ:最小単位が1メッシュなので、見たい分の範囲設定が可能
・高精度:mm〜cmの精度で地表の変動が推定
・過去に遡って:2014年頃からのアーカイブも検証可能
・ゼンリン地図で見やすい!
SARデータはそのまま使えるデータではないので、高額になりがちです。
さらにそこに解析データや、付随するデータを加えることでよりいいものになりますが、その分また金額が上がってしまします。
LiANAは1メッシュ21万円/年額から利用が可能です。
一般的な感覚では21万円という金額はいささか高いと感じてしまうと思いますが、1年間の費用ということと、険しい山の斜面や、都市部の地下の状態を把握しなければならない場合におそらくもっと費用が高くついてしまうと思います。
さらに必要な範囲を指定できるので、把握した場所だけを表示させれれば無駄がありませんね!
利用しているのは建設コンサルタントの方々が多いようですが、他にも活用できる事業者の方々は多くいるのではと感じています。
これが実際のLiANAの画像です。
デモ体験の際に撮影させていただきました。
画面中央が9メッシュが2かたまり、右の縦長が10メッシュです。
必要な範囲で利用が可能ですが、日本地図として元々適応されているメッシュがあるので、利用したい範囲が何メッシュになるかは事前に確認が必要ですね。
変動の結果を範囲上ドットの色として視覚化してくれて、リスクに対してのコメントも確認できます。
過去のデータからどれくらいの変動があるかも見比べることが可能です。
デモ体験ではいくつかの地域の実際の変動リスクを見せてもらいました。
今のユーザーは建設コンサルタントが多いですが、地方で山林を保有されている個人の方や、別荘地を管理している不動産事業者、損保業界も活用できるのでは感じました。
保有している山林での地滑りや土砂崩れなど起きてしまったら所有者の費用負担で改修工事を行う必要が出てきます。
別荘などの不動産でも同じですが、古い測量図面はあったとしても地盤変動のリスクまで売買契約時には提示されないものだと思いますが、大きな買い物だからこその安心に繋げられると思っています。
(一個人としては地盤が沈み込んでいる土地に立っている物件は絶対に買いたくないです!)
また、現状はALOS-2のデータをメイン利用しているので、解析・評価の更新は年4回とのことですが、今後は利用できるデータを増やしていくそうですし、掛け合わせる地上データも増えていけばさらに活用できる人たちが増えていきそうなシステムだと感じました。
何より、普通の地図アプリに近い感覚で操作できるので、衛星データ解析の知識や、衛星データ利用の経験がなくて使いこなせるツールですね。
あとがき
人工衛星データを活用した地表面の変動をモニタリングできるシステムのLiANAのデモ体験&スカパーJSATの宇宙事業の説明でより詳しく知れた記者懇談会でした。
実は前々からスカパーJSAT社には取材したいと考えていたので、今後LiANAについてや、宇宙ビジネスMEDIAとして企画している特集記事で取材を申し込んでおりますので乞うご期待です✨
スカパーJSAT公式HP:https://www.skyperfectjsat.space/