みなさんこんにちは!宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!

先日も『THE 有人DAY!!!』のライブ配信についての記事を掲載しましたが、2部構成だったので記事も分けています!

気になる方はTHE 有人 DAY!!! 宇宙飛行士×「きぼう」×「こうのとり」生配信トークライブ【第1部】をご確認ください。

第1部は「きぼう」と「こうのとり」の管制官や管制室の普段は見れない現場や、運用風景が見れましたが、第2部は大西宇宙飛行士と、こうのとりのFD(フライトディレクター)の内山氏のトークライブです。

ちなみにこのお二人は大学の同級生で、2008年に実施された宇宙飛行士の選抜試験を受けられていて、内山氏もJAXAで働きながらファイナリストに残られているので、当時の試験の内容を話されていました。

10月にJAXAが13年ぶりに宇宙飛行士の募集を発表して話題になりましたよね!

宇宙ビジネスMEDIAでも取り上げているので、併せて読んでもらえると宇宙飛行士についての理解度が深まると思います!【宇宙飛行士ってどんな仕事?】13年ぶりにJAXAが新たな宇宙飛行士を募集

これから宇宙飛行士を目指す方も参考になると思います!

2008年 宇宙飛行士募集要項(抜粋)

前回実施された選抜試験の募集要項をまとめておきます。

新たな募集要項はまだ発表されていないので、変わってくる可能性はありますが、参考にはなると思います。


●日本国籍を有すること

大学(自然科学系)卒業以上であること

自然科学系分野における研究、設計、開発、製造、運用等に3年以上の実務経験を有すること

宇宙飛行士としての訓練活動、幅広い分野の宇宙活動などに柔軟に対応できる能力を有すること

訓練時に必要な泳力を有すること

国際的な宇宙飛行士チームの一員として訓練をおこない、円滑な意思の疎通が図れる英語能力を有すること

宇宙飛行士としての訓練活動、長期宇宙滞在等に適応することのできる医学的、心理学的特性を有すること

日本人の宇宙飛行士として相応しい教養等を有すること

10年以上宇宙研究開発機構に勤務が可能であり、かつ、長期間にわたり海外での勤務が可能であること

米国勤務当初に必要な国際免許の取得のため、日本の普通自動車免許を採用までに取得可能なこと

所属期間(または、それに代わる機関)の推薦が得られること


上記に当てはまる方は募集要項をクリアしているので、選抜試験に挑戦可能です!

英語が話せて精神的、肉体的に健康な自然科学系の大学を卒業していて、実務を3年経験している車の免許を持っていて簡単に辞めなくて、海外勤務が可能な日本人!ってことですね!!!

ハードルが高いのかいまいちピンと来ない部分もありますが、大西宇宙飛行士が紹介してくれた訓練内容を聞く限りは体力、筋力もかなり重要な項目になりそうです。

(提供:JAXA)

船外活動訓練として、宇宙服を着て水中の中で作業を行う訓練があります。

一度作業を始めると6時間はぶっ通しで動き続けるので、宇宙飛行士でもぐったりしてしまい、訓練生では最初の頃は2時間で動けなくなる人や、時間内に作業が終わらない人も続出するそうです。

船外活動が始まると気軽に休憩を取れる環境ではないので、もちろんお昼休憩などもありません。

(提供:JAXA)

その他にも『野外リーダーシップ訓練』というものがあり、アメリカの国立公園で15人程度のチームで、日替わりでリーダーを交代しながら20kgくらいあるリュックを背負ってその日のゴールをクリアしていく訓練があります。

チームで協力して崖を登ったり、飲水の確保をしたりと肉体的、精神的なプレッシャーを抱えての訓練もあったようです。

写真では綺麗な川が写っていますが、訓練では綺麗な水の確保が出来ずに濁っている川の水をバンダナでこして飲んだりもあったようなので、肉体的にも精神的にも強くある必要はありますね。

また、宇宙飛行士が宇宙にいる時間はキャリアの中でも5%程度らしく、残りの95%は地上での訓練や他の仕事に従事しているようです。

宇宙飛行士に憧れている方や、これから挑戦しようとしている方は、その現実を直視して挑んでください!

選抜試験を振り返って

大西宇宙飛行士と内山フライトディレクターのトークライブで2008年の選抜試験を振り返っていきます。

選抜プロセス(2008年実施時)

書類選抜 第一次選抜(2日間) 第二次選抜(約1週間) 最終選抜(約2週間)
実施項目 書類審査

英語試験

医学検査

一般教養試験

基礎的専門試験

医学検査

面接試験

(心理、英語、一般・専門)

医学検査

長期滞在適性検査

面接試験総合

対象者数 963名 230名 50名 10名

書類選抜から最終選抜までは約8ヶ月と非常に長い期間がかかります。合格発表まではさらに1ヶ月かかるようです。

試験内容も英語能力や一般的な学力試験もあり、面接もたくさん行われます。

心理圧迫面接という聞いただけでもストレスかかりそうなのが丸わかりな面接も。。。

人数もどんどん絞られていくので、第二次選抜の頃には受験生同士で横の繋がりができ、最終選抜の10名は苦楽を共にした仲間として今でも関係性が続いているようです。

募集の発表があってから書類選抜までに3、4ヶ月あったらしく英語やロシア語を勉強したり、ジムに行って体力作りなど行っていたようです。

8ヶ月間にも及ぶ選抜試験を仕事を続けながら挑むには、会社の協力も必要不可欠です。

後半の選抜試験では1週間〜2週間という長期間に及ぶ試験もあるので、休まなければいけなかったり、選抜試験の最中にもJAXAの担当者が会社に挨拶にも行くみたいです!

合格後に所属会社が「どうしてもこの人は出せない!」という事になったらJAXAとしても困るので、それを防ぐためでもあるようです。

最終選抜の中に「長期滞在適正検査」というのがありますが、宇宙飛行士になればISSという閉鎖空間で死と隣り合わせの中、半年間という長期間、他のクルーと協力してミッションをおこないながら生活をいなければいけません。

そのために、選抜試験では「閉鎖環境試験」が行われました。

閉鎖環境試験

(提供:JAXA)
左の画像が外観で、右の画像が見取り図です。
見てわかる通りかなり狭い空間ですが、実際のISSの空間を模しています。
カメラは5台、マイクもいたる所にあり、受験者の行動をずっと監視している状況で1週間の閉鎖環境試験が行われます。
『見られている』と意識して生活することは想像以上に疲れるらしく、大西宇宙飛行士も閉鎖環境試験1日目はとても疲れたと話しています。
内山フライトディレクターは見られているから意識的に行動することを早々に諦めて『素』の自分を出していったようです。
試験を監視されているということは、言動の一つ一つを採点されている感覚になり、気が抜けなくなりストレスがどんどん溜まっていくので、どう割り切るかも重要なポイントみたいですね。
休み時間でもカメラの方向が変わったりと『見られている』感があるようで、実際に経験したお二人も「気にしていたら1週間保たない」と言っています。
その他にも、受験者の間で討論試験が行われたようです。

討論

テーマに対して2つのチームに分かれて討論をおこない、最終的に試験官が勝ち負けを決定する試験で、1時間程度の準備時間で試験が行われました。
自分がどう思うかではなく、賛成派と反対派に分かれて討論をおこない結果が出たら入れ替わってまた討論をおこないます。
自分の想いを伝えるのではなく、賛成派の主張、反対派の主張がしっかりできるかがポイントになっていきます。
2008年の選抜試験で出た討論テーマの1つに『日本も環境税を導入するべきである』と出ています。
当時、本当に日本としての議論に上がった内容で、2011年には一部導入されています。
いろんな要素を見られる試験だと考えられますが、油井宇宙飛行士は抜群に強く7回全勝の記録を出していたようです!
逆に内山フライトディレクターは7敗だったようで、当時の記録をはっきり覚えているそうです。
ご自身で言っていましたが、後になって「油井さんと一緒のチームになれればなー!」と負け惜しみを知っていたそうです(笑)
それくらい油井宇宙飛行士のディベートの強さは当時の最終候補者の中でも際立っていたようです。

千羽鶴を折りなさい

他にはこんな課題があったそうです。

1,000羽/10人 → 100羽/1人 時間は4日×1時間の4時間

1つ前の選抜試験では『白いジグソーパズルを作りなさい』という課題が出ていて、有名な課題なので知っている人もいるかと思います。

4日間の課題ですが、決められた時間にひたすらと自分のノルマ分の折り鶴を折っていきいます。

1羽折るのに2分24秒しか使えません!

大西宇宙飛行士は最初の1時間では10羽程度しか折れなかったようです。

単純に黙々と折るだけでも結構時間がかかると思いますが、最終選抜社としては課題の意図を考えてしまうようで、『どういった要素を見ている課題なのか?』と考えながら常に行動をしていたみたいです。

試験中に何も説明されずにパッと出された課題なら考えてしまうのが当然だと思いますし、意識しながらの行動には精神的負荷も相当なものだと思います。

ちなみに、この課題は金井宇宙飛行士が得意だったそうですよ!

グリーンカード〜極秘司令〜

宇宙兄弟で描かれたグリーンカード。

受験者の中で、司令を出されて他の人たちからは反感を買うような物を壊すなどの極秘司令が実際にあったのかの話題になりました。

不測の事態という事では、1度あったようですが、宇宙兄弟のようなものではなく、昼食が予定よりも1時間遅れる事があったようで、交通状況の影響で遅れていると説明があったようです。

ただ、受験者はその1時間を楽しく談笑して過ごしたので、不測の事態という点では完全に不発だったみたいです(笑)

宇宙兄弟で描かれているような、ある特定の受験者に向けてのピンポイントなグリーンカードはなかったようです。

内山フライトディレクターとしては、もっと厳しいものでも良かったのではとコメントしていました!

自己アピールしてください

突然入ってきた課題であったようです。

各自1時間程度で準備を行い、できる限りの自己アピールを行ったようですが、複数の国の言語で歌を歌う人や、舌のを折りたたんですごい形にできます!という人までいたようです!

そんな中で、何も思い浮かばなかった大西宇宙飛行士はご自身が好きなミュージカルのシーンを一人2役で演じたそうです!

ご自身でもおっしゃっていましたが「凄く寒いのをやりました」とのコメントに見ていた内山フライトディレクターも「最初は凄く寒かったですね!サムイボができるくらいでした(笑)」と言っていましたが、段々と全員が引き込まれていって最終的には拍手喝采で終わったそうです。

ちなみに、内山ディレクターは当時やっていた競技バドミントンのユニフォームを着て、自己アピールを行ったそうです。

選抜試験のメンバー

選抜試験を共受けた人たちとはいまだに関係性が続いているそうで、最終選抜の10人はもちろんですが、2次選抜の50人も何かニュースがある度に連絡を取り合ったり、今は集めれないので、オンライン飲み会をしたりしているようです。

13年前の試験の話をつい最近のことのように話し合える仲間になっていて、社会人になってからは中々できないので、大切な宝物になっているようで、それぞれの存在が切磋琢磨しあえるいい関係で羨ましく思えました。

あとがき

今回は前回の選抜試験を実際に受けられたお二人の話をフォーカスしました。

普段は聞けないようなお話や体験談でとても楽しく視聴できたので、みなさんもぜひアーカイブ動画も見てください!

来年の秋には宇宙飛行士の募集要項の発表があるので、宇宙飛行士を目指している方は絶対に参考になりますし、宇宙ビジネスに興味を持っている人、宇宙ビジネスに携わっている人にとっては新たな切り口のヒントにもあると思っています。