皆さん、こんにちは!
地上から宇宙へ打ち上げるものは、衛星やロケット、宇宙ステーションなど様々あると思いますが、皆さんは補給機というものを知っていますか?
補給機は名前の通り大切な役割があります!!
またこの補給機も以前取り上げた宇宙ゴミとも関係があるのですよ!
ということで、
今回は日本の補給機、『こうのとり』についてご紹介致します!
こうのとりとは?
『こうのとり』とは、H-ⅡBロケットにより打ち上げられる補給機で、食料や衣類、各実験装置など最大6トンまでの補給物資を国際宇宙ステーションに送り届けています。
今回の9号機は2020年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。
補給が完了すると、用途を終えた実験機器や使用後の衣類などを積み込み、大気圏に再突入して燃やします。
直径は4m、全長は10m弱の観光バスが収まる大きさです。
質量は約10.5トンで、最高体重約5トンのアジアゾウ2頭分の重さです。
機体は大きく分け、3つの部分から成り立っています。
先頭には補給物資を格納する「補給キャリア」、中程には誘導制御系・電力供給系・通信データ処理系の各電子機器が搭載される「電気モジュール」、最後部には軌道変換用のメインエンジンと姿勢制御用のRCSスラスタ、それらに推進薬を供給する燃料/酸化剤タンク、高圧気蓄器等が搭載される「推進モジュール」で構成されています。
ランデブ飛行期間は約4日間、国際宇宙ステーション(ISS)滞在期間は約45日間、軌道上緊急待期期間は約7日間です。
こうのとりに携わっている企業
こうのとりは宇宙開発事業団とJAXAが開発をしています。
製造には、三菱重工業や三菱電機、IHIエアロスペースなど100社ほどの企業が製造しています。
3社のみですが、例として各企業がどのような役割を担っているか挙げたいと思います。
IHIエアロスペースエアロスペースはこうのとりの曝露パレット等の担当をしています。
曝露パレットは、ISSのバッテリを輸送するための荷台です。
三菱電機では、こうのとりの頭脳である電気モジュールの開発を担当しています。
愛知県にある東明工業では、こうのとりの組み立てをしています。
こうのとりはたくさんの企業の技術を結集して作られているのです。
こうのとりの製作費用
そんな観光バスが収まってしまうほどの大きさのこうのとりですが、
その開発費用は、なんとおよそ271億円と言われており、打上げ費用の方は118〜147億円とされています。
日本の技術力の粋を集めたこのこうのとりは、世界で唯一の無事故の現行補給機であるといいます。
一方、さらなる費用対効果を向上させるため、文部科学省は2015年に、こうのとりのコストを現在よりも減らし、100億円程度とする方向で検討していたようです。
というのも、前回ご紹介しました国際宇宙ステーション(ISS)の運用維持費自体が年間350億円程度かかっており、これから先さらに人工衛星等を順当に打ち上げるために、軽量化によるコストの削減を推し進める必要があるとのことです。
また、今回の運用終了にともない、JAXAでは現在「こうのとり」の後継機として新型宇宙ステーション補給機の開発を進めている段階です。
こうのとりの最後の任務
ちなみに任務終了の際、こうのとりが最後にISSへ届けたものが何だったのか、皆さんご存知でしょうか。
それは、キウイだそうです!
それ以外にも、パプリカ、レモン、温州みかんなど、柑橘類が豊富なラインナップですね。
日本の新鮮な果物を手に、ISSに搭乗している皆さんも大喜びのご様子です。
役目を終えたあとのこうのとり
役目を終えたこうのとりは、2020年8月20日(木)午後3時40分(日本時間)に第3回軌道離脱マヌーバを実施し、大気圏に再突入し、処理されました。
こうのとりを大気圏再突入させるには、こうのとりのスラスタ(小型エンジン)を噴射して軌道制御し、これまで飛行していた地球周回軌道を離脱する地点を遠地点、落下予定地点を近地点とする長楕円軌道に投入します。
その後、ニュージーランド東の海上上空辺りで熱圏に再突入し、中間圏で空力加熱による機体の破壊が始まり、最後まで融解されずに残った破片が南太平洋上へ落下するという段階を踏むわけです。
新たな課題か?
2017年1月28日、こうのとり6号機はISSから分離された後、宇宙デブリの除去技術の実験を計画したところ、実験装置の約700メートルの金属製ワイヤーが伸びず、大気圏突入前まで再試行し、結果失敗してしまったとのこと。
宇宙デブリ問題についての取り組みは目覚ましく、全国各地の名だたる企業、ISS、そして物資補給機であるこうのとりも、その実用性を駆使し、宇宙デブリを除去しようと奔走しているようです。しかし、こうした取り組みの中で、役割を終えたこうのとり自身が宇宙デブリとなってしまう可能性も否定できないのではないでしょうか。
任務終了後、実際に大気圏に突入し、完全に焼却される様子を確認することができないため、新たな宇宙デブリとして宇宙に残ってしまう恐れがあるわけです。この課題を払拭できなければ本末転倒になりかねないのではないでしょうか。宇宙の現状を観測するにあたって、その大役を担っているのはISSですが、いち早く、より精度の高い宇宙監視システムの構築を目指さなくてはならないのかもしれません。
まとめ
『きぼう』や『はやぶさ』、そしてこの『こうのとり』。
名称だけであれば、宇宙に詳しくない方でも一度は耳にしたことがあるかと思います。
国際宇宙ステーションで長期間ミッションに携わり、地球市民の未来のために日々命がけで任務に当たって下さる宇宙飛行士の方々にとって、彼らの食料や物資を運ぶかけがえのない役割を担っていたこのこうのとり。
そして、それを支えている企業や日本の民間企業の皆さんをはじめとし、ますます宇宙との関わりを意識する方々が増えていくことを願っています。
(掲載元の記事)URL日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」が運用終了 – その軌跡と未来(3) 「こうのとり」ミッションの集大成、そして未来へバトンをつないだ最終号機
【参考文献】
国際宇宙ステーション|宇宙開発|事業紹介|株式会社IHIエアロスペース
三菱電機 研究開発・技術 研究開発 研究開発・技術一覧 情報通信システム 宇宙ステーション補給機「HTV」ランデブ技術
東明工業 | 宇宙産業を支える日本の企業 | JAXAと産業
宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)の 大気圏への再突入完了について
「こうのとり」が任務終え大気圏に突入 宇宙ごみ除去技術実験 宇宙環境・エネルギー
「こうのとり」が大気圏に再突入して燃え尽きる様子を日本から見ることはできますか?