みなさんこんばんは。
宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です。

年々言われ続ける『異常気象』。
どの季節においても気温の落差が激しかったり、今年の夏も暑すぎてダウンした人も多かったのではないでしょうか。
体調面以外でも農作物や生物の生態系など大きな影響をもたらしています。
世界的に見たら本当に危機的な状況でもあります。

気候変動によって何が起きているのか、今の地球の状態と予測をIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新研究や科学者の方々から学ぶ会に参加してきましたので、一部資料も掲載しながら参加レポートをお届けします。

気候の予測とは。どのように予測しているのか。

(提供:CONSEO)

登壇者:東京大学大気海洋研究所 渡部雅浩氏

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

IPCCとは

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織で、2021年8月現在、195の国と地域が参加しています。IPCCの目的は、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることです。世界中の科学者の協力の下、出版された文献(科学誌に掲載された論文等)に基づいて定期的に報告書を作成し、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供しています。
 IPCCには、下図のとおり3つの作業部会と1つのタスクフォースが置かれており(下図)、それぞれの任務は以下のとおりです。

WG1: 気候システム及び気候変動の自然科学的根拠についての評価
WG2: 気候変動に対する社会経済及び自然システムの脆弱性、気候変動がもたらす好影響・悪影響、並びに気候変動への適応のオプションについての評価
WG3: 温室効果ガスの排出削減など気候変動の緩和のオプションについての評価TFI: 温室効果ガスの国別排出目録作成手法の策定、普及および改定IPCC組織図
図 IPCC組織図
(気象庁HPより抜粋)

各国政府の気候変動政策に科学的基礎を与えるための組織で、それぞれのグループで任務が異なっています。

そのIPCC WG1の報告書を元に東京大学大気海洋研究所 渡部雅浩氏の講演が始まりました。

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AR6(第6次評価報告書)のまとめとして、
・The Current State of the Climate
いま気候はどうなっているか?
・Our Possible Climate Futures
将来の気候はどうなってゆくか?
・Climate Information Risk Assessment & Regional Adaptation
リスク評価・地域の適応のための気候情報は?
・Limiting Climate Change
気候の変化を抑えるには?

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提示している4つの大項目や主なポイントの根拠となるのが、20世紀以降の様々な観測データ、古気候の代理指標データ、数値モデルによるシミュレーションデータ、そして理論。

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様々なデータや数値モデルからサブモデルを作成して検証していくことで、自然科学としての見解を提示することができます。

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自然科学的根拠に基づいて『人間活動が気候システムの温暖化および広範で急速な気候変化をもたらしてきたことは疑う余地がない』と結論づけました。

『今後数十年の間に温室効果ガス排出削減を強力に進めない限り、今世紀末までに温暖化レベルは+1.5°Cおよび+2°Cを超える』

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『熱波、豪雨、干ばつ、強い台風、北極海氷・積雪・永久凍土などの損失といった気候システムの変化の多くは温暖化の進行とともに大きくなる』

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『自然科学的観点からは、人間活動が引き起こす温暖化をあるレベルでとどめるには、CO2以外の温室効果ガスの排出を強力に減らすこととともに、CO2累積排出量を止めること【すなわち正味でCO2の排出をゼロにすること】が求められる』

異常気象などはニュースでも取り上げられていますし、体感として感じてはいるけど、自然科学として考えたことが無かったので、こういった根拠のもとに出されているニュースだったんだと感じました。

気候予測に衛星は使われているのか?

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登壇者:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
第一宇宙技術部門 地球観測研究センター(EORC) 久保田 拓志氏

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もちろん!と言っていいレベルで使われていますね!
衛星からの地球観測データの蓄積で過去を知り、現在の変化を把握し、未来を予測していきます。

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この画像を見るだけで二酸化炭素濃度の変化が一目瞭然ですよね!
時期的な変化も見られますが、年々著しく変化していっているので、定期的な地球観測が重要なのかが分かりますね。

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これは南極海、北極海の海氷の大きさを観測していった結果で得られたデータです。

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名古屋大学の「民間における宇宙利用」のグループワークでいけだも使用したGSMapです!
降水データは台風や線状降水帯などの対策などに活用されますが、これまでの過去データの蓄積により、雨が振りづらい時期と地域とを予測することが可能なので、イベント開催時にも活躍できるツールが無償なんですよ!!!
(これを有償化されたら気軽に自己学習やビジネスアイデア練るのに支障が出るからこのまま無償で使わせ続けて欲しいです!)

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ドップラー雲レーダ搭載衛星のEarthCARE(はくりゅう)は雲の高さ分布だけでなく、動きもわかり、雲の量をより正確に測定することができます。

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一番身近な人工衛星は気象観測のひまわりかも知れませんが、地球を観測している人工衛星はたくさんあり、それらが地上のデータと組み合わさることで気候変動の把握、監視、予測につながっていきます。

現在の地球、異常なのか、正常なのか?

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登壇者:気象庁 情報基盤部
数値予報課 数値予報モデル基盤技術開発室 計盛 正博氏

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そもそも「気象業務」と「数値予報」が馴染みがないですが、様々な観測データから得られた情報を元に数値化し、参考情報として予報作業を行います。

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『大気現象を支配する方程式をコンピュータで解くこと』これだけ聞くと文系出身としては難しく感じてしまいますが、下に説明されている基本的な考え方を見るとイメージが湧きますね!

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当然ではありますが、気象現象により最適な数値予報モデルを活用していて、衛星観測データも活用されています。

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『大気追跡風』自体も馴染みがないものですが、雲や水蒸気の動きを捉えて風向や風速を1時間ごとに算出し、世界中の気象機関が利用する重要データになります。

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衛星観測データを利用した際の予測と実際の画像を見比べてみるとよりいいものになっているのが見て取れるかと思います。

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気象予報=天気予報としてイメージされるのは気象衛星ひまわりだと思いますが、一般的にはそれ以外の人工衛星データが活用されていることは知られていなかったります。
実は身近である気象予報は宇宙からの多くのデータを用いて出されていることを知れました。

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登壇者:東京大学 先端科学技術研究センター 教授
気象庁 異常気象分析検討会会長 中村 尚氏

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実感として今年も猛暑だったことはお分かりでしょうが、こうやってデータとしてみると一目瞭然ですね。

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・平均気温平年差は沖縄・奄美で+0.9°Cで統計開始以降1位、西日本で+1.4°Cで1位、東日本は+1.7°Cで昨年に並び1位、北日本は+2.3°Cで2位
・9月に入っても記録的な高温が継続
・昨夏に続き、全国的な猛暑、ただし昨夏とは異なり平年でも気温の高い東海以西の各地域で記録的な高温
・これを反映し、猛暑日の全国累積地点数は2018年・2023年を上回り過去最多を記録

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「暑い〜」と毎日言いながら過ごしていましたが、気象的観点で猛暑だった要因が記されています。
自然現象なので、それを止めることは難しいんでしょうが、ただ”暑い〜”というだけではなく要因を知ることも大切だと感じました。

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ニュースなどでも耳にした『海洋熱波』ですが、2023年の三陸沖で顕著だったようで、海洋から大気への加熱を示唆しているようです。

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平年と比べての『異常気象』というのは、平年とされている対象の気象データがあり、今年のデータを比較し、様々な観測データから要因を探していくことで、未来の異常気象に備えていくことができるんだと感じました。
科学の力で気象を操作するまでには至っていなくても、異常気象に前もって備えられれば被害はかなり抑えられます。

気候変動に人類がどう向き合うか

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登壇者:東京大学 未来ビジョン研究センター 教授 江守 正多氏

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これからの地球に対しては『緩和』と『適応』が必要なようです。
温室効果ガスが増加するなら、排出を抑制する緩和。
温暖化による気候変動に対しては防災・減災の強化や対策をする適応。

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『世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2°Cより十分低く保つとともに、1.5°Cに抑える努力を追求する』
中村先生の講演でもありましたが、東日本で+1.76°Cを記録しているのですでに抑えられていません。
数字だけみると大したことないように感じてしまいますが、世界規模で猛暑が続いていくことを容認できず、各国が対策に動いています。
脱炭素やカーボンニュートラル、カーボンクレジットなどニュースで目にする機会も多いかと思います。

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これからの行動次第で未来が大きく変わっていくタイミングに来ていますね!
世界中が約束を守るだけで子供達、そのまた子供達が住む地球を守れます!

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排出削減は絶対にしなければいけないことですが、上記の画像からやれることはたくさんある事がわかりますね。

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異常気象、温暖化を抑制するためにこれからの選択と行動で大きく変わっていきます。
日々の変化は大きくないかもしれませんし、行動の結果を実感するのはすごく先になってしまうかもしれませんが、一人一人が集まって国になって、地球という惑星の自然現象に影響を与えていくので自分自身のことという当事者意識が必要なんですよね。

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あとがき

登壇された科学者の皆さんの講演を一部抜粋して掲載してみました。

『気象』は身近な存在ではありますが、実際は「今日の天気は?」、「今日の気温は?」という天気予報として捉えていて、そのさらに先のことまで意識できていないと実感しました。
自然科学や気象は難しいという先入観で遠ざけていましたが、分かりやすく説明してもらえると理解ができるので、自分でも一歩進むきっかけになりますね!
(もちろん難しい内容もありました!)

今回はCONSEOがどんな内容のものなのかをさらっと掴んでもらえるように、それぞれの講演を抜粋してみましたが、もっとしっかりと知りたいという方はぜひ次回の第5回に参加してください!


● 日時:11月20日(水)15:00~16:00
● 開催形式:現地開催のみ
◆ 会場:室町三井ホール&カンファレンス
(東京都中央区⽇本橋室町3-2-1 COREDO室町テラス 3F)
● 言語:日本語
● 主催:一般社団法人クロスユー 共催:三井不動産株式会社
● 参加登録:
NIHONBASHI SPACE WEEK 2024のホームページからのご応募となります。
● アジェンダ
◆ 15:00~15:05:オープニング(JAXA 山川宏 理事長)
◆ 15:05~15:20:基調講演(ESA ヨーゼフ・アッシュバッハー 長官)
◆ 15:20~16:00:気候変動対話
◆ ヨーゼフ・アッシュバッハー(ESA長官)
◆ 角南 篤(CONSEO会長、笹川平和財団理事長)
◆ クリスティン・イグルム(駐日ノルウェー大使)
◆ 森田 香菜子(慶應義塾大学 経済学部 准教授)
◆ モデレーター:嶋崎 政一(文部科学省 研究開発局宇宙開発利用 課長)