皆さんこんにちは!

11月29日午後4時25分にデータ中継衛星を搭載したH-IIAロケット43号が、
種子島宇宙センターで打ち上げられましたね!
私は動画で見ましたが、動画では伝わらない迫力や興奮が現地にはあるのだろうかと思うと
実際に目の前で見てみたいと思いました。
今回は動画に関連するH-IIAロケットとデータ中継衛星1号機、光データ中継衛星
ついて
紹介していきます。またH-IIAロケットの後継機となる予定のH3ロケットに
ついても少し触れていきます!

それでは、どうぞ!

H-IIAロケットとは

概要

現在日本で用いられている主力大型ロケットは、H-IIAロケット、H-IIBロケットの2つがあります。


(左)H-IIAロケット、(右)H-IIBロケット(提供: JAXA)

H-IIAロケットは、人工衛星、探査機の打ち上げるために開発されたものです。
ロケットの大きさは直径4メートル、全長53メートルです。その全長はパリの凱旋門50mと大体同じぐらいです。

(提供: photoAC)

H-IIBロケットの目的は、宇宙飛行士の生活に必要な物資や研究用資材を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ、宇宙ステーション補給機「こうのとり」を打ち上げることです。
ロケットの大きさは直径5.2メートル、全長57メートルです。H-IIAロケットより少し大きいです。

複数の衛星を同時に打ち上げ

H-IIAロケットの技術を紹介します。

衛星を打ち上げる際、従来のロケットは別々に打ち上げていました。
技術開発により、37号機では複数の衛星を異なる軌道に投入することに成功しました。1回の打ち上げに統合できるようになったため、費用対効果の高い打ち上げを実現できるようになりました。

(提供: JAXA)

地上レーダ設備の不要化

H-IIAロケットの技術を紹介します。

従来のロケットは打ち上げるために地上レーダ局を使い、飛行安全管理を行っていました。
地上レーダ局は位置情報を取得し安全に飛行するためには欠かせないシステムです。
しかし、地上レーダ局は設備を維持するために費用がかかってしまいます。この問題を解決するため、37号機ではロケットに新たに開発した航法センサーを搭載することにより、地上レーダ局に頼らず飛行安全管理を行いました。
地上レーダ局に頼らない技術を開発したことにより、打ち上げに必要な地上設備の簡素化に成功しました。

(提供: JAXA)

ロケットの開発費用

H-IIロケットという日本初の純国産ロケットの開発で培われた技術をもとに開発されたのがH-IIAロケットです。H-IIロケットからの改良開発費は1532億かかりました。

 

上の図から分かるようにアメリカと比べると比較的安価に開発されています。

ロケット打ち上げ費用

ロケット打ち上げ費用(ロケット製造費用の他に、輸送・点検・保安費用等の打ち上げに関わる費用全般)

ロケット H-II H-IIA Ariane5 Falcon9 Proton M
日本 日本 ヨーロッパ アメリカ ロシア
打ち上げ費用 140~190億円 100~125億円 200億円 70億円 72億円

H-IIロケットの打ち上げ費用は140億円〜190億円ほどかかっていました。
設計の簡素化や製造作業・打ち上げ作業の効率化により、H-IIAロケットの打ち上げ費用はH-IIロケットと比べ約40億円削減できました。

しかし、アメリカやロシアと比べると打ち上げ費用が高いので、低価格なH3ロケットの開発を図りました。
H3ロケットの打ち上げを約50億円で目指しており、2021年に打ち上げ予定です。

ロケット打ち上げ成功率/オンタイム率

H-IIAロケットは2001年に試験機1号が打ち上げて以来、今回の打ち上げで43回目の打ち上げになります。そのうち42回も打ち上げに成功しており成功率が97.7%と高い水準を保っています。

下の表は2019年12月末現在の状態ですが、日本のH-IIAロケット、H-IIBロケット両方合わせた打ち上げ成功率は97.9%と各国と比べても高い状態で打ち上げに成功しています。

ロケットの打ち上げにおいて予定時刻通り(オンタイム)に打ち上げることはとても大切なことです。
惑星やISSなどは、地球からみて時間が経つと位置を変えてしまいます。太陽を考えてみると時間によって位置が変わっていきますね。一度機会を逃してしまうと、次の機会が数ヶ月後なんてこともあるみたいです。

日本のオンタイム率は81.3%です。各国と比べると非常に高い事が分かります。

各国のロケット打ち上げ状況(2019年12月末現在)

ロケット 打ち上げ成功率 オンタイム率
H-IIA/B(日本) 97.9% (47/48)  81.3%(13/16) 
デルタ4(アメリカ) 97.5% (39/40) 54.5%(6/11) 
ファルコン9(アメリカ) 97.4% (75/77) 54.1%(33/61) 
アリアン5(欧州) 96.2% (102/106) 75.9%(22/29) 
プロトンM(ロシア) 89.9% (98/109) 不明
長征3(中国) 95.0% (115/121) 不明

 

データ中継衛星1号機と光データ中継衛星とは

人工衛星とは

まず初めにデータ中継衛星1号機光データ中継衛星と聞いてもわからない方も
いらっしゃると思いますので中継衛星(通信衛星)の話をする前に、人工衛星について簡単に
説明させていただきます。

人工衛星とは、惑星の引力に引かれて、惑星の周りを回り続けるものを衛星と呼び、
人が人工的に作り上げた衛星を人工衛星と呼んでいます。
観測したデータは地上局へと送信されます。

赤道上空36000㎞を静止軌道と呼び、そこにある人工衛星を静止衛星と呼びます。
1日24時間、赤道上空36000㎞離れた宇宙から私たちの生活を支えている人工衛星(静止衛星)は大きく分けて3つに分類されます。

①観測衛星-地上の天気を観測する気象衛星
皆さんご存じ天気予報に活用されています。

②測位衛星-地球上の物体や人の位置を正確に測るための衛星
GPSと言えば皆さん分かりますよね?googleマップとかに使われています。

③通信/放送衛星-映像や音声、データを中継するための衛星
私がすぐに思いついたのはCS放送です。
他にも災害時の情報発信等、多方面で活躍しているようです。

ちなみに通信衛星と放送衛星の違いは通信衛星が地上の受信局として大きなアンテナ等の施設が
必要なのに対し、放送衛星は出力が大きいため小さなアンテナで各家庭で受信できることです。

データ中継衛星1号機と光データ中継衛星とは

データ中継衛星とは、低軌道(2000㎞以下)を周回する人工衛星や宇宙船と地上局の間の通信を
静止軌道上(36000㎞)で中継する通信衛星の一種です。

データ中継衛星1号機は、政府の事実上の偵察衛星などが観測したデータを中継して地上に
送るための衛星です。データ中継衛星を使うことによって通信視野範囲が約4倍以上になりました。
内閣衛星情報センターが運営する情報収集衛星のデータを中継することで、
安全保障及び危機管理に利用されます。今までよりも早く危険を感知することができますね!

光データ中継衛星は、観測データを中継して地上に送信することが役割です。
今回の光データ中継衛星は電波を用いた先代の「こだま」と違い、光通信を用いたことで、
通信速度がなんと約7倍以上の高速化に成功しています。アンテナ径は約1/30まで大幅に小型化され、中継データに対する傍受や妨害にも強くなりました。宇宙空間での光通信によって、通信容量の大型化・小型化・高信頼化の実現に期待が集まっています!

データ中継による通信視野範囲拡大イメージ図

通信可能時間が増えたことによって災害時の状況把握などがより速く行えるようになり、
地球周回衛星が取得したデータを最大限活用できるようになります。

(提供:JAXA)

光データ中継衛星に採用されている光衛星間通信システム(LUCAS)

地球観測衛星(低軌道衛星)光データ中継衛星(静止衛星)間のデータ中継を、レーザ光を
用いた宇宙空間での光通信によって実現するシステムになります。
簡単に説明すると低軌道衛星から地上局にデータを直接送信するよりも、
中継衛星を通した方が速く送信できるということです!
(提供:JAXA)

電波を用いたデータ中継衛星「こだま」

通信速度(240Mbps)
通信視野範囲(軌道周回1周(90分)の内の約10分間)
アンテナ径(3.6m)

 

 

 

 

 

(提供:JAXA)

光通信を用いたデータ中継衛星

通信速度(1.8Gbps)
通信視野範囲(軌道周回1周(90分)の内の約40分間)
アンテナ径(14cm)

 

 

 

 

 

提供:JAXA)

H3ロケットとは

宇宙への輸送手段として用いられているH-IIAロケット。その後継機としてH3ロケットが2021年に種子島宇宙センターから試験機として打ち上げが予定されています。
H3ロケットは低価格でありながら、柔軟性と高信頼性の観点において優れた機能を搭載し、より使いやすいロケットとしての実現を目指しています。

 

 

 


(提供:JAXA)

なぜ新型ロケットの開発が必要なのでしょうか?
→ 宇宙において「輸送」は重要な役割を担っています。現在使われているロケットをより使いやすいロケットにすることで、輸送への活性化に繋がっていきます。

打ち上げ能力の不足

衛星が大型化したことで、H-IIAロケットでは対応しきれない部分が出てきました。
H-IIAロケットの衛星打ち上げ能力は、標準型で4トン。ブースターを装着した204型では6トンに及びます。
しかし、近年ではその質量を上回る6トン超えの衛星が出てきました。衛星が大型化している理由として、衛星が扱うチャンネル数の増加や技術革新によって、より多くの中継機を搭載するようになったことが挙げられます。

H3ロケットの特徴🚀

H3ロケットはこれまでのロケットと違い、大きさが一回り大きく、約63mに及びます。大きさだけでなく、固体ロケットブースター(SRB)無しで飛ぶことができるのも特徴的です。また、H3ロケットでは様々なバージョンに対応出来ます。

SRBを2本から4本に増やしたり、ロケット本体の1段目のエンジンを2基にすることも可能です。
H-IIAロケットと比べて、取り付け部分が簡略化されており、コストの削減にも繋がっています。

固体ロケットブースター(SRB)

そもそも固体ロケットブースターとは何なのでしょうか?

例を挙げるなら、私たちが普段利用している自動車。
自動車はガソリンを燃料として動いていますよね。

固体ロケットブースターは自動車でいうガソリンみたいなもの。ロケットや人工衛星などを打ち上げる際に必要な推力を得るために、機体の外部に設置される固体燃料のことです。
この固体燃料が打ち上げにおいての動力源にもなっています。

LE-9エンジン

ロケット打ち上げ事業が掲げる目標として「信頼性が高い」「コストが安価である」「打ち上げの柔軟性」があります。今までのロケットにはこれらが相反する要素が含まれていました。この問題を解決するために、H3ロケットにおいて新たな技術開発LE-9エンジンが取り入れられました。

H-IIAで使われていたLE-7Aエンジンとは異なるエンジンシステムを採用したことで、約1.5倍の推力を獲得しました。さらに主要パーツ数を20%削減したことで、高い信頼性と低コストの実現に成功しました。

 

 

 

 

 

 


(提供:JAXA)

H-IIAロケットから飛躍的な進化を遂げたH3ロケット。これからの活躍に期待が高まりますね!!

まとめ

今回は11月29日の動画に関連した内容でしたが、
興味を持っていただけたでしょうか?
動画の内容について興味がある方は打ち上げ動画を検索してみてください!

皆さんがほんの少しでも「そうなんだ」「面白いね」と関心を持って
いただけたのなら幸いです。
これからも皆さんが少しでも興味を持ってくれるような、そんな記事を
書いていきます!

では、また次回お会いしましょう!

 

 

【参考文献】

H2Aロケット打ち上げ成功…政府などのデータ中継衛星を搭載 : 科学・IT : ニュース

H-ⅡAロケット43号機による 光データ中継衛星の打上げについて[文部科学大臣談話]

費用が安いから? なぜアリアンロケットは商用化に成功したのか

H-IIA|ロケット|JAXA 宇宙輸送技術部門

ロケット開発の歴史|ロケットの基礎知識|Column|JAXA 宇宙輸送技術部門

H-IIAロケット – Wikipedia

主要大型ロケットの比較

文部科学省/宇宙について

H-IIAロケット43号機打ち上げ成功、政府とJAXAのデータ中継衛星を搭載

経済産業省ロケットについて

JAXAにおける宇宙輸送に 関わる取り組み

光衛星間通信システム(LUCAS) | 人工衛星プロジェクト

こだま(DRTS) | 人工衛星プロジェクト

H-IIAロケット、打ち上げ成功 光データ中継衛星を搭載

H2Aロケット 打ち上げ成功 – Yahoo!ニュース

衛星通信とは – JSAT – SKY Perfect JSAT Corporation

2015年8月号掲載 通信衛星ってなに?

データ中継衛星 – Wikipedia

コスト“半額”。次世代ロケット「H3」で狙う、持続可能な宇宙開発の未来

新型基幹ロケット「H3」の挑戦(1) H-IIAロケットを使い続けられない5つの理由