みなさんこんばんは⭐️

宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です。

2022年4月26日(火)に行われた、株式会社アクセルスペースの新サービス発表会に参加してきたので、レポートします。

もう既にリリースなどでご存知の方も多いかもしれませんが、小型衛星の活用企業であるアクセルスペース社が新しいサービスを始めるとの事で、X-NIHONBASHIで記者発表があり、いけだも現地で取材してきました。

アクセルスペース社については以前の記事を読んでもらえれば詳しく書いてあります。

【アクセルスペース社】日本初!量産人工衛星打ち上げに向けたお披露目会【記者発表】

今回の発表会は何と言っても新サービスについて!

これまで、小型衛星ビジネスにおいて、日本のトップを走ってきているアクセルスペース社の新事業は気になりますよね。

今回はこの新サービス『AxelLiner』にフォーカスをして、新サービス発表会のレポートをしていきたいと思います。

新サービス『AxelLiner』について

(提供:AxelSpace)

これまでの人工衛星開発のノウハウや、GRUSの4機同時製造を通じて得られた課題を元に、小型衛星の量産を実現していくのがAxelLinerです。

これだけ聞くとただの大量生産をイメージする人も多いかもしれませんが、これまでの人工衛星の開発は基本的にはフルカスタムで毎回設計からスタートしていました。

細かい要求に応えられるが、コストと時間がかかってしまうことがデメリットでした。

実行したいミッションに合わせて、機能をカスタマイズする必要があり、それに伴いバス機器(人工衛星を動かす基本部分)もカスタマイズされていました。

これまでのフルカスタムに対し、AxelLinerは汎用衛星システムとして、顧客のニーズを分析し、適合するミッション機器を提案することで、開発コストとそれにかかる時間を大幅にカットしていきます。

(提供:AXELSPACE)

技術仕様としての標準バスではなく、衛星プロジェクトにおける顧客体験の革新を行い、ビジネスフローとして確立していきます。

(提供:AxelSpace)

AxelLinerの特徴の一つとして、宇宙事業者向けサステナビリティ評価制度SSR(Space Sustainability Rating)のベータテスターとして設計から製造、運用、廃棄に至るまでの一連で高い基準を設定して対応していきます。

宇宙においては、宇宙ゴミとしてのデブリが思いつくかと思います。

また、運用が終了してそのまま軌道上に残っている人工衛星や、デブリの衝突などで壊れてしまった部品などが漂っているので、無計画に宇宙空間を利用していると地球の周りがゴミだらけになってしまうので、宇宙機器には運用が終了した際の廃棄方法もあらかじめ決めておかなければいけません。

宇宙業界でもサステナビリティは意識していかなければならない大切な課題の一つです。

これまでのAxelSpaceの事業として、小型人工衛星のコンステレーションによる画像・解析ソリューションとしてのAxelGlobeがありました。

詳しくは以前の事業報告会の記事を参照してください。

【アクセルスペース】次世代地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」の事業進捗報告会に参加&広報担当者への取材で分かったポイント!!

これからのAxelSpaceは2つの事業を柱としてさらに躍進を目指していきます。

(提供:AxelSpace)

AxelLiner『受注から軌道上でのサービスインまで1年未満』を目標に掲げています。

そのためには、3つの研究開発が鍵となります。

・高性能な小型衛星汎用バスシステム

・自動(無人)運用システム

・衛星製造システム

(提供:AxelSpace)

高性能な小型衛星の汎用バスシステムが元々あれば、極端に言えばミッション部分のみを作ればいいので、時間の短縮が可能になり、複数機を製造する上では品質を揃える必要があり、量産するためにパートナー企業と宇宙機製造アライアンスを組み、サービスイン後は自動(無人)運用システムにより人工衛星の運用・監視を実現していきます。

(提供:AxelSpace)

課題を解決することで、これまで2〜3年かかっていた納期を受注してからサービスインまでを1年未満を目標に掲げられるようになります。

また、上記の画像を見れば分かりやすいのですが、人工衛星全体に対して、ミッション部分の比率は約30%程度だったものに対して、AxelLinerはミッション部分の比率を50%以上に引き上げようとしています。

これまでよりも2倍近くのミッション機器を搭載できることになります。

(提供:AxelSpace)

公開されているバスのスペックは130kgのAxelLiner Bus-Nと200kgのAxelLiner Bun-Hの2種類です。

設計寿命はどちらも7年で年間の生産機数は50機以上が可能とのこと。

理論上は一気に50機体制のコンステレーションでサービスを開始することが可能ですね。

(提供:AxelLiner)

また、自動運用システムとしては、AxelGlobeで培ったノウハウが提供されます。

運用実績のあるシステムで、一般ユーザーにも使いやすいUXで提供される点も安心ですね。

また、AxelTerminalでは、ビジネス設計から運用まで一貫したUI/UXで使えるのもポイントだと思います。

一つのシステムで完結する方がユーザーとしては楽ですし、いちいち操作方法を覚え直すのも正直手間ですからね。

(提供:AxelSpace)

現時点での宇宙機製造アライアンスのメンバーが発表されました。

それぞれの強みを活かした体制を構築して、設計から製造、運用までにかかる時間的、リソース的なコストダウンをはかります。

ここまで、AxelLinerの特徴や技術的な部分の説明を行いましたが、次の資料がこれから人工衛星ビジネスの参入しようとしている企業にとっては分かりやすいかと思います。

(提供:AxelSpace)

AxelLinerを使用すれば、顧客は『実現したいこと』をミッション実現チームに伝え、ミッション系の提案から開発・製造、打ち上げるロケットの手配や、人工衛星からのデータを受信する地上局の手配、各種許認可の手続きまで行ってくれて、運用もお任せできて、顧客側には専用の運用システムが提供されるという、オールインワンのパッケージとなっている訳です。

(提供:AxelSpace)

この『宇宙で事業をしたい人をお手伝いする事業』という説明が一番分かりやすいかもしれませんね。

やりたい事を伝えて、実現までしてくれるのがAxelLinerの凄いところだと思います。

とは言え、やりたい事が何でも実現するサービスという訳ではありません。

物理的、技術的に実現が難しいようなミッションもあるでしょうし、フルカスタムで対応した方がいい場合もあるかとは思います。

まずは、実現可能性の確認を行います。

人工衛星の制約を考え、低軌道衛星コンステレーションの期待と物理的な制約について理解を深めます。

次に、事業と技術面の調整を行います。

特に、「スモールスタート」と理想的なコンステレーションの形態には大きな乖離があるとこがあるので、事業方針とともに理想系を検討する必要があります。

そして、いよいよ製造から打ち上げのフェースです。

技術的な調整・契約が完了したら人工衛星を作っていき、試験を経て打ち上げます。

この時に並行して地上システムのテスト環境が提供されます。

打ち上げ後、バス部の初期チェックアウトをしてからお客様に引き継がれて、衛星利用の開始となります。

あとがき

今回の新サービス『AxelLiner』の発表会に参加し、説明を聞いた感想としては、「人工衛星ビジネスの参入障壁がかなり低くなる」でした。

人工衛星を活用したビジネスを行う際に問題となるので、アイデアと、専門知識、環境です。

もちろん、専門知識のある人材が揃っていて、画期的なアイデアをお持ちの企業には必要ないかもしれませんが、人工衛星ビジネスに異業種から参入する企業はどんどん増えていくはずなので、それを見越しているAxelLinerというサービスは画期的だと感じました。

ただ、現状のフルカスタムよりも時間的、金銭的コストが大幅に圧縮されるとはいえ、元々の小型人工衛星1台の費用が数億円かかり、1/10までコストダウンしたとしても、1台数千万円となるので、決して安い金額ではありません。

AxelLinerでの具体的な費用はミッションや規模感にもよって変わってくるので、一概に発表できない部分ですが、仮に二千万円の小型人工衛星を5台のコンステレーションを形成したら1億円となり、打つ上げ費用や運用費用などプラスでかかることになります。

現状の、価格を知っていれば大きなコストダウンですが、イメージがついていなければかなり高額に感じる人も少なくはないと思います。

ただ、宇宙開発がもっと進めば、価格は下がっていくはずですし、今の人工衛星とはまた違った使い方、活用方法が確立されていくことでしょう。

その先駆者としてAxelSpaceのAxelLinerは注目度が高いといけだは感じました。