みなさんこんばんは⭐️

宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!

今回は、北海道の大樹町にあるロケット発射場の整備や運営、今後のスペースポート化を目指すために、大樹町やインターステラテクノロジズ社の出資により2021年4月に設立されたSPACE COTAN株式会社に取材を申し込み、CEOの小田切氏にインタビューしました!

以前から大樹町の宇宙産業については取材してきていたので、インタビュー出来たのは嬉しかったです!

大樹町宇宙交流センターSORA -北海道十勝管内大樹町での取材-

大樹町のこれまでと、これからについて『大樹町役場航空宇宙推進室の西尾係長にインタビュー』

 

大樹町の宇宙産業についての記事を読んでいただければ、今回取材したSPACE COTAN株式会社のことが更に詳しくなれると思うので、ぜひ読んでみてください!

インタビュー開始!

(SPACE COTAN)

Q, SPACE COTAN株式会社はどんな会社ですか?

『SPACE COTANは何をやる会社ですか?』とよく聞かれるのですが、分かりやすく表現すると、インターステラテクノロジズ社がANAやJALなどの航空会社で、SPACE COTANが空港運営会社ですね。

今までは、大樹町やインターステラテクノロジズ社が行っていた業務を整理して、管理運営体制を整えていくために、会社を立ち上げました。

今は立ち上げたばかりですが、近い将来には大樹町から「指定管理者制度」というものを請けて、射場の管理を行っていきます。

本格的に始まるのは2023年度にインターステラテクノロジズ社が軌道投入ロケットZEROの打ち上げ予定なので、それまでにはしっかりと運営を行う予定です。

Q,HPを拝見しましたが、宇宙版シリコンバレーとはどんなイメージですか?

産業の集積地を作るのが趣旨です。

射場を作って運営管理をすれば、ロケット業者がきてロケットを打ちますが、そこから派生して、ロケットを作る会社や、人工衛星を作る会社、ロケットの燃料を供給する会社、ロケットの装備品を作る会社、エンジンを作る会社、基礎部品を作る会社、工具や治具を作る会社など航空宇宙産業の集積を作っていきたいと思っています。

航空の分野では、MRO(Maintenance Repair Overhaul)という整備の分野があります。

飛行機のエンジンは、定期的に降ろしてオーバーホールし、直して取り付けてまた飛ぶというサイクルがあり、降ろしてきた時に部品を全てバラして、修理や交換、検査を行っています。

こういった産業地は日本各地にあり、例えば三菱重工のある名古屋周辺や、名古屋に近い、長野県の飯田にも産業集積があります。

それ以外にも国内には40ヶ所以上MROの産業集積があるのですが、今は航空機の世界で、航空機のエンジンや装備品の整備を行っていますが、今後はこれの宇宙版として、大樹町を中心にして十勝、帯広、ゆくゆくは北海道全域に広げていきたいと思っています。

宇宙版シリコンバレーを目指すなら大樹町だけでは全然足りなくて、帯広だけでも足りないと思っています。

室蘭工大や植松電機など、宇宙産業に関わっているところと協力をして作り上げていくのが宇宙版シリコンバレーだと思っています。

一つのいい例としては、植松電機はロケットを打ち上げるにあたっての様々な実験設備を持っています。

ロケットの打ち上げは一発勝負ではなく、何度も実験や検証を繰り返していくので、大樹町の周辺にこういった実験設備を持つことも重要だと思っています。

まずは、宇宙産業の集積地ができれば、従事する人が増え、従事する人が増えれば生活者が増え、そうなればスーパーなどの生活するうえでの店舗が増えていき、小学校や病院など人口増加に伴い増えていくので、産業集積を基盤にして街全体を活性化していきます。

もちろん、大樹町だけにとどまらず、ロケットの打ち上げなど数千〜数万人の方が見学に来てくださるので、帯広のホテルに泊まってもらえれば経済波及効果が見込めるので、地域の経済を発展させることも将来の大きな夢の中に入っています。

Q,4月に設立されたばかりですが、今はどんな事業がメインですか?

2023年に完成予定の、Launch Complex-1(LC-1)の射場を作る準備を急ピッチで進めています。

(提供:SPACE COTAN)

このLC-1の射場は、インターステラテクノロジズ社のZEROというロケットなどが使用する予定になっているので、打ち上げ予定に影響が出ないように調整をしながら進めています。

一方で、射場を整備するにあたり必要となってくる資金については、総務省から出る補助金の地方創生交付金とふるさと納税を使って対応しようとしています。

第一期工事といわれる、LC-1射場と1,000m滑走路の300m延伸する工事については約10億円かかるので、その半分の5億円をふるさと納税で集めるために準備をしています。

十勝、帯広、札幌、さらには全国の企業に協力のお願いをしています。

昨年度は92,500,000円でしたが、お声がけしている企業は少なかった中で、ご協力頂いた企業には今年度もお願いをしていこうと考えています。

現時点では、目標の約半分の金額は目処が立っているので、残りの金額を達成できるように調整しています。

国の補助金は来年度の予算になるので、秋ごろまでには5億円のふるさと納税を集めて、それと同等金額の地方創生交付金をいただくことが目標達成となります。

Q,SPACE COTANの想いをお聞かせください

前職が航空会社なので、航空宇宙の分野でのますます広がっていく認識でいましたし、ANAグループとしても宇宙への取り組みや、空飛ぶ車などの新技術への取り組みもあり、ロケットへの期待もありました。

実際に、宇宙産業に飛び込んでみると、日本でもたくさんの人工衛星を開発している事業者がありますが、打ち上げる射場については、鹿児島に2箇所しかなく、ほとんどが政府需要でJAXAが人工衛星を打ち上げています。

海外では、民間企業がロケットを作り、打ち上げているので、日本でもその流れを取り入れる必要があると思っています。

アメリカ、ロシア、EU、中国に遅れをとっていますが、この先日本が再度輝くためには、ここで世界の宇宙産業に食らい付いていって日本の強みを活かした分野で伸ばしていくことが重要だと思っています。

日本は小型化などの技術は強みの一つだと思っています。

小型ロケットや、小型衛星などの分野は世界でもトップクラスだと感じているので、この分野でしっかりと基盤を作ることだと思っています。

その中で、大樹町は地形学的に非常に恵まれている環境で、東側と南側が太平洋に拓けていて、東側にも打てますし、極軌道にも容易に打ち上げることができるので、このアドバンテージは非常に大きいと思っています。

それに、晴れの日が多いことと、東京からも含めて、アクセスがいいことが挙げられます。

海外の射場では車で数時間かかる不便な環境の中で1ヶ月間カンヅメになり作業するという事を聞いていますが、我々の射場は大樹町の市街地から車で約30分、帯広市内からは約1時間、東京からでも3時間あれば到着します。

今後、海外のロケットベンダーが来る事を考えると、このアクセスの良さもかなり優位性があると思っています。

あとは、将来的な射場を増やすことも可能な用地が広大にあることも挙げられます。

ロケットという機体は、汎用の射場を作って全て統一規格で使っていくことは中々難しく、ある程度はロケットのサイズや燃料に合わせて、射場を整備していく必要があります。

現時点でも150平方キロメートルの土地を持っており、今の計画のLC-1、LC-2を作ってもまだまだ余裕があるので、拡張性の高さも強みの一つだと考えています。

Q,SPACE COTANとして、今後人材の募集はありますか?

今後を見据えた上で、人材の募集は考えています。

今年の夏にもロケットの打ち上げが始まっているので、それに伴ってどういった人材が必要になるのかは検討しなければいけないと思っていますし、今後はインターステラテクノロジズ社以外の海外のベンダーへのテクニカルなサポートも必要になってくると思いますので、まずはテクニカルな人材を想定しています。

ただ、今後は企業として運営していく上では、理系文系共に人材を募集していく予定ですので、文系出身の方でも弊社では大いにチャンスはあると思います!

Q,今後の計画や展望をお教えください

まずは射場をしっかりと整備し、ロケットを沢山の企業に定期的に打ち上げてもらえると運営が軌道に乗るので、まずは安定の仕組みを作ることと、航空宇宙産業の裾野を段階的に広げていきます。

インターステラテクノロジズ社は主に大樹町で製造していますが、他の業者さんも誘致し、ロケットや人工衛星、周辺の装備、部品を作る企業が増え、実験設備も整え、大樹町の中に様々な工場が連立している形を目指していきたいですし、大樹町だけに止まらず十勝、帯広のエリアが活性化していくことを目指しています。

今の大樹町の人口は約5,500人で、北海道には179の市町村があるのですが、148の市町村が過疎地域に認定されていて、元々の産業が弱くなってきてしまっているので、航空宇宙産業を活力の礎にして北海道全体をより元気にしていきたいと考えています。

その為の源は人材だと思っています。

北海道には4つ高専やたくさんの大学があるのですが、卒業しても北海道内に仕事が少なく、内地に行ってしまいます。

北海道で学んだ事を北海道で活かせれば人口流出が止められるかもしれないと思っています。

地域の活性化のためには、大都市圏への過度な人口集中を防ぐためにも、地元での産業を構築することが重要だと考えています。

地元に戻るためには生活基盤を支える産業の活性化を持続させる必要があります。

私自身も東京から大樹町に移り住んでいますが、東京と比べてもストレスがなく、生活環境は豊かに感じています。

真冬の北海道はまだ経験していないので、少し怖いのですが、実は大樹町は日本で2番目に寒い地域で日本一寒い場所よりも約1°C負けているだけなので、せっかくだから1番寒い地域になれるように今年は祈ろうと思っています!笑

幸運な事にロケットの打ち上げは寒くても可能なので、寒さでも1番を目指します!

Q,SPACE COTANが世界に向けて今一番発信したいしたい内容を教えてください

この場所のアドバンテージが非常に大きいと思っています。

日本以外にもアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスなどで射場の建設、運営がされていますが、これからの需要の増え方から考えると、まだまだ射場は必要で、競合関係としてライバル視するのではなく、それぞれのメリットを活かして、利用するお客様を集めていくんだと思っています。

我々としては、大樹町の立地のアドバンテージが大きいので、世界のロケットベンダーや、日本では今はインターステラテクノロジズ社だけですが、射場ができれば日本でのロケットベンダーも増えてくるはずなので、そういう企業にもこの射場の利便性を発信していきたいですし、特に東南アジアの企業については、自国では地理的な理由でロケットを打ち上げられない環境が多いので、『ロケットを打ち上げるなら大樹町』ということを覚えて頂きたいし、この地域を活発化、活性化させていきたいです。

メディアの皆さんからは「今年4つの射場が出来上がるので、コンペディターができて大変ですね」や「競合との差は何ですか?」とよく聞かれるのですが、私自身は国内の他の3つの射場を競合とは思っておらず、それぞれ打ち上げ方が違ったり、運営も違うので、それぞれの特徴をしかしていく。

いがみ合う関係ではなく、むしろ日本の射場として、横で上手くコンソーシアムのような関係を組んで、日本の射場を発信していくことも大切なので、大樹町に海外のお客様が来た時に打ち上げられなかったら、串本の射場をご紹介したり、他の民間射場を紹介したりできればいいと考えています。

これまでの宇宙産業の方々の努力によって、国がかなりサポートをしていて、民間の打ち上げビジネスや、人工衛星のビジネスにサポーをしてくれているので、法の整備や内閣府の取り組みなど手厚くしてくれているので、我々もしっかりと期待に応えていかなければと思っています。

(提供:SPACE COTAN)

ただ、我々としてはロケットを打ち上げることだけが目的なわけではなく、ロケットが打ち上げる人工衛星を活用して、みんなの利便性が向上したり、人工衛星を活用する事業者の収益性や効率が上がっていくことが目標ですね

今はまだ、人工衛星を活用することでどういうことに事業活用ができるのか、十勝で言うと農業者や漁業者のみなさんが人工衛星のデータを使うことで、効率が上がったり、収穫量が上がったり、産業者の省人化に貢献できます。

一次産業の方々と話している部分もあるので、今年の8月に帯広で開催する『北海道宇宙サミット2021』に地元の宇宙に携わっていない方々にも来てもらって情報収集や情報発信をして、宇宙産業の方と意見交換をすることでビジネスに活かして頂く場を作れればと考えています。

(提供:北海道宇宙サミット実行委員会)

あとがきとお知らせ

4月に設立されたばかりでまだまだお忙しいタイミングの中、CEOの小田切氏に取材を受けて頂きました!

基本的なことから企業としての想いを熱意を持ってお聞かせ頂きあっという間のインタビューでした。

以前から取材し、大樹町の航空公園にも何度も伺っていたので、SPACE COTAN社にインタビュー出来たのはいけだ個人としてかなり嬉しいですし、今後の計画も2023年にLC-12025年にLC-2と新しい射場が2つも出来上がる予定になっています。遠い未来の話ではなく、数年後の計画で正直ワクワクしています!

また、インタビュー中にもありましたが、2021年8月26日、27日の2日間にわたり『北海道宇宙サミット』が開催されます

Day1の26日はオンラインの射場ツアーをYouTubeで配信

Day2の27日はカンファレンスとビジネスサロンを帯広市で開催します。

チケットの申し込みや詳細はHPを確認してください!

北海道宇宙サミット-2021-

また、北海道スペースポートの資金をふるさと納税で集めているので、興味のある方はぜひHPを見てください!

北海道スペースポート

最新情報はHPと合わせてTwitterも!

Hokkaido Spaceport@hospojapan

宇宙へ飛び出すために必要なロケット。

そのロケットを打ち上げるために必要になってくるのが発射場です。

これまでは、鹿児島の種子島や内之浦でJAXAが打ち上げていましたが、これからはどんどん民間企業が活躍する時代です。

しかも、ロケットの打ち上げは一大イベントです!

今年の星出宇宙飛行士の打ち上げには約10万人の観光客が集まったようです。

大樹町の射場では、新型コロナウイルス感染防止措置のために、打ち上げの見学が禁止されていますが、落ち着いたらいけだも見に行きたいと思っています!

実際に近くまで足を運んでしますが、小田切氏が言っていたように本当にアクセスがいいので、日本の宇宙産業を盛り上げるためにも、ロケットの打ち上げもみんなで応援して盛り上がっていきましょう!!