みなさんこんばんは!

宇宙ビジネスMEDIA編集長の池田 真大(いけだ まさとも)です!

今回は昨年、2020年12月15日に小型SAR衛星の実証機である『StriX-α』を打ち上げ、今年2021年2月にはStriX-αからの画像の取得にも成功していてこれから忙しさが加速していく、株式会社Synspectiveを取材しました!

これからの人工衛星ビジネスを牽引するSynspective社に、色々と質問をぶつけてみましたが、親切丁寧に解説してもらったので、みなさんにも分かりやすくそのままお届けできます!

今回はPR担当の熊崎さんと藤川さんにご対応頂きました!

それでは、インタビュー開始です!!

Q,Synspectiveとはどんな会社ですか?

Synspectiveは、小型SAR衛星による観測データを活用したワンストップソリューション事業を行う世界で唯一の会社です。

弊社の小型SAR衛星については、元々は内閣府主導の「ImPACT」プログラムというイノベーションプロジェクトがあり、そこの成果を応用し、独自開発を行うことで実証機である『StriX-α』を打ち上げる事ができました。

(提供:Synspective)

今後はコンステレーション(衛星群)を構築し、そこから得られるデータを販売したり、そのデータをソリューションとして開発して提供しています。

Q,ImPACTの成果を応用したとのことですが、どういう経緯なんですか?

元々、Synspectiveが設立されたのは、内閣府ImPACTプログラムの社会実装が主な目的となっています。

従来のSAR衛星はとても大きな人工衛星が主流だったのですが、「小型化しよう」と研究開発をしていたのがImPACT時代の話です。

ImPACTは2015年から2018年まで、Synspectiveが設立されるまでの約3年間行っていて、人工衛星の基幹部分となるバスシステムなど人工衛星を小型化したときに機能するのかを、慶應義塾大学や東京大学、東京工業大学、JAXAの著名な教授や研究者の方々が集まって研究開発を行い、その成果をSynspectiveが社会実装するために設立されました。

設立から2年で小型SAR衛星の打ち上げまで成功させられたのは、ImPACTの存在が大きかったですね。

Q,Synspectiveの目指すものはなんですか?

Synspectiveが掲げているミッションは『新たなデータとテクノロジーにより、人の可能性を拡げ着実に進歩する「学習する世界」の実現』です。

英語のタイトルとしては、『Synthetic Date for Perspective』(直訳すると「さまざまなデータを組み合わせて世界を見渡す」)という意味で、この言葉の組み合わせがSynspectiveの社名の由来となっています。

SAR衛星でデータを作り、主軸サービスのソリューションで、衛星データをデータサイエンスや、機械学習を使って衛星データを理解しやすい形にして提供しています。

Q,Synspectiveのビジネスモデルを教えてください!

人工衛星を開発して宇宙に打ち上げてコンステレーションを構築し、地球観測データを提供していくことと、取得した衛星データをデータサイエンスや機械学習を使ってソリューションとして提供します。

この2つがSynspectiveのビジネスモデルです。

世界的に見ても自社で小型SAR衛星を保有してソリューションを提供する会社はSynspectiveの他に無いので、そこに強みを持っています。

独自の衛星を保有することで、常にユーザー視点のソリューションの提供が出来ることが強みとなります。

提供しているソリューションはSaaS型(※ブラウザとインターネット接続を使って、データセンター内のサーバ上にホストされ管理されているアプリケーションにアクセスし、料金はサービスの使用量に応じて、あるいはサブスクリプション方式で支払う形式)で、既に作ってあるモノをお客様に使って頂いたり、βバージョンとしてお客様の事業に合わせてカスタマイズを行ったりもしています。

Q,Synspectiveが大切にしていることは何ですか?

元々、データの力というものを重要視していて、『広大な領域をカバーするデータの必要性と、その膨大なデータを理解し、行動につなげる重要性』というものを掲げています。

身近な例で言うと、昨年発生した新型コロナウイルスの大流行で、みなさんの生活が大きく変わったと思いますが、2020年の1月頃はまだ世界で何が起きているのか分からなかったと思います。

数ヶ月後に様々な統計データが出てきて、専門家がそのデータを解析して、科学的根拠に基づいて政府が対応の判断を行っていました。

このようにデータを使うことで、効率的で安全な未来を創ることが出来ると考えています。

Synspectiveの小型SAR衛星のデータをどんな事に活用するかというと、例えば大規模な都市開発やインフラ開発、自然災害への対処などです。

大規模な都市開発では、衛星データを基盤とした客観的事実に基づいた判断もできますし、災害時において2時間以内にデータの提供が可能です。

これらは持続可能な社会インフラを構築するという場面と、災害時が起きた時によりレジリエンスの高い社会を創り出すことが可能になります。

Q,Synspectiveが打ち上げているSAR衛星について教えてください!

SARとは「Synthetic Aperture Radar」の略で、日本語では「合成開口レーダー」と呼ばれるレーダー衛星です。

SAR衛星はマイクロ波という電波を使って地形や、構造物を観測します。

マイクロ波は波長が長く、雲を透過するので日中、夜間、天気に左右されず観測することができます。

アジアなどでは雨季が長く雲に覆われることが多いため、衛星写真などで見られる光学衛星では観測が困難な場合でも、雲に覆われていても、夜間でも観測が可能なSAR衛星は、近年需要が高まっています。

(提供:JAXA)

デジカメや目で見たままの色や形を写すのが光学画像で、電波を対象物に照射して、反射を観測してモノの形を写すのがSAR画像です。

また、従来のSAR衛星は重量が1,000kg級の大型人工衛星が主流で、製造から打ち上げまでのコストが200億円以上になっていましたが、Synspectiveが打ち上げた実証機である『StriX-α』は重量は約1/10の100kg級、コストは約1/20の10億円以下を実現していて、性能としては同じ分解能(※カメラでいう解像度)を保持しています。

小型・軽量化・低価格化が進んでいくと量産がしやすくなり、コンステレーションとして複数機の人工衛星を飛ばして、観測頻度を上げる事が可能となります。

Q,コンステレーションの計画はいかがですか?

Synspectiveは2023年までに6機体制に向けて動いています。

将来的には30機のコンステレーションの体制にしていきます。

これが実現すると、世界中のどこでも2時間以内に観測することが可能で、その観測データを1時間程度で解析し、トータル約3時間でデータを提供することが可能となります。

(提供:Synspective)

まずは2023年の6機体制を目指して頑張っている最中です!

ちなみに、今年2021年は、実証2号機である『StriX-β』を打ち上げて、2機体制を作り上げる予定です!

Q,ビジネスモデルで出てきたソリューションについて教えてください!

2020年に2つのソリューションをリリースしました。

1つが『Land Displacement Monitoring』で、衛星データを用いて広域の地盤沈下などの地盤変動を解析し、その結果を提供するソリューションサービスで、リスクを把握したり、時系列に沿ってどれくらいの年月をかけて地盤が沈下したのかを見ることができるサービスです。

(提供:Synspective)

現状では、ソリューションの中に入っているデータは購入したものですが、将来的にはSynspectiveで取得したデータを使用していきますので、高頻度でタイムリーなデータを提供できるようになります。

もう1つが『Flood Damage Assessment』で浸水被害の評価サービスです。

(提供:Synspective)

2019年の夏に大型台風による被災は記憶に新しいかと思いますが、近年増えている水災害被害の広域な状況把握に使用されるサービスです。

Land Displacement Monitoringと同様に今後、Synspectiveで取得したデータを使うことで、即時での状況把握が可能となります。

他にはβ版として、工場の稼働状況を観測するものや、様々な衛星データを組み合わせながらCO2の排出量などを観測するサービスなどがあり、他にもソリューションを追加していく予定です。

Q,お二人のPR・広報のお仕事について教えてください!

広報の仕事としては、衛星開発やソリューション開発については、理系のお仕事になるのですが、彼らが理系の頭で考えていることを、文系出身として言葉に直してあげることが一番重要なポイントだと思っています。

どうしても難しい言葉や、分かりにくい表現が多く出てきてしまうので、同じ文章を何度も何度も直しながら「どうしたら伝わるか」を意識しながら作成しています。

お互いにチェックをしながら何度も読み直していますね!

必ずしも理系じゃないとダメだとは感じた事はないですが、分からないこともたくさんありますけどね!笑笑

ソリューション開発のホワイトボードを見るとアルゴリズムがたくさん書かれていて、議論が白熱しているんですが、全く分からないですね!笑

ただ、自分も含めてSynspectiveは勉強することが嫌いな人はいないし、社内では誰にでも気軽に聞けるフラットな環境があるので、分からないことも日々勉強しています。

Q,PRについてのやりがいや大変さなど聞かせてください!

私(熊崎氏)は12年くらいPR業務に携わっているのですが、代理店にいる時の楽しさと、事業会社にいると時の楽しさは全く別物ですね。

クライアントのPR業務を任せてもらった時の楽しさは、掲載が取れることや、クライアントが喜んでくれることだったのですが、事業会社では掲載が取れたことよりも、会社が発信したいメッセージや、商品、サービスをメディア担当者とコミュニケーションを取りながら理解してもらって掲載してもらえたことですね。

ここが中々難しい部分で、ちゃんと理解して書いてもらえないといけないのでジレンマも多いし、大変なことも多いですよ。

専門用語が多くなるし、技術的に凄いことでもニッチな内容だと取り上げてもらえなかったりと。。

ただ、面白いとは思っていますね!

この半年は特に凄かったです!

打ち上げの生配信や内閣府からの画像取得の記者会見などPRとして初めてのことも多く大変ではありますが、やはり面白いなと思っていますね!

あとがき

前から何度も取材している『牧田くんはJAXAに転職したい!』にゲストとして出演していて、気になったので取材を申し込ませてもらったSynspective社ですが、自社衛星の打ち上げ、画像取得、さらには2号機の開発もある多忙の中でも、かなり詳しく教えてもらいました!

今回、お話を聞かせて頂きました、PR担当の熊崎さん、藤川さんのお二人にはSynspectiveついて詳しく説明して頂き、さらにはいけだ個人の興味として、宇宙企業での広報・PRのお仕事についても聞かせて頂きました!

理系だけではなく、文系出身の人でも宇宙企業で活躍しているので、宇宙に携わりたい人は諦めずに動くべきですね!

ちなみに、熊崎さんからお聞きした必要スキルは『英語』『情熱』でした!

独自の小型SAR衛星を持っていて、ソリューションを提供している会社は世界で唯一なので、Synspectiveを注目しておかなければ宇宙ビジネスに置いていかれちゃうかもですよ!

これから宇宙がどんどん身近になっていって利用する機会が増えてくる、人工衛星からデータに今から少しずつでも理解を深めてほしいなと思っていますので、Synspective社が気になる方はHPにもっと詳しい資料も掲載してあるのでチェックです!!

株式会社Synspective ホームページ:https://synspective.com/jp

Synspective Inc. Linkedin:https://www.linkedin.com/company/synspective/